研究課題
申請者は、食欲中枢で作用するレプチン受容体の欠損(LepRKO)メダカの表現型にアジア人型2型糖尿病様症状、及び異常行動を見出した。前者は脂肪蓄積とインスリン抵抗性を伴わない慢性的高血糖である。後者はヒト不安症状に相当する行動である。両者は代謝量が減少する時期の連続した過食により遅発的に発症することも特徴的であった。メダカはマウスやラットと異なり皮下、内臓脂肪を蓄積しにくい生理的特徴をもつ。本件では、肥満を伴わない糖尿病の原因解明と、2型糖尿病と不安症を示す新たなモデル生物の確立を目指す。そのためには、LepRKOメダカの成長過程における1)空腹時血糖値、2)摂餌後の血中インスリン濃度、3)血糖調節組織における遺伝子発現、4)行動の追跡定量が必須である。申請時点では、1)と4)の定量比較は終了した。申請研究開始後、様々な給餌下における摂餌後のインスリン分泌量を測定し、2)の解析が終了した。それとともに、LepRKOメダカが過食給餌下ではインスリン分泌促進に関連する遺伝子発現が低下し、インスリン分泌不全を示し、一方で、過食給餌量の半分量では、インスリン分泌不全を示さないことが分かった。その後、pdx1遺伝子(膵臓で発現する遺伝子)の下流でGFPを発現し、また、インスリンプロモーター遺伝子の下流でmCherryを発現するメダカを作製した。現在、そのメダカを用いて、血糖調節組織における遺伝子発現を解析し、栄養状態が血糖値制御を混乱させるメカニズムの解明を進めている。
3: やや遅れている
H28年度末時点で、解析に必要な遺伝子組換えメダカの作製は完了しており、H29年度に本申請の目的を達成するための膵臓の遺伝子発現の解析を終了する予定だった。しかし、解析に必要な細胞数が不足したため、サンプルを取り直し、予定しいた計画より遅れてしまった。その後の解析は順調に進んでいる。
H30年度中に飼育環境により影響を受け、かつ血糖値制御に影響を及ぼす遺伝子の特定が達成できる見込みである。より確かなものとするために、膵臓だけでなく、肝臓、脂肪組織のトランスクリプトーム解析も行う。
H27年度の結果から、トランスクリプトーム解析用のサンプルの調製方法に見直しが必要となった。H28年度の研究代表者の所属変更により、研究実施場所が変更になった。方法の見直しと実施場所変更への対応に時間を要し、トランスクリプトーム解析に必要なサンプル回収の見込みがH29年度末となった。従って、サンプル回収後のトランスクリプトーム解析はH30年度に行う見込みとなり、それに係る費用として次年度使用額を使用する。
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