研究課題/領域番号 |
15K18394
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
山本 昌代 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (30596284)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鉄過剰 / 糖代謝 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
MDSでは鉄過剰が臓器障害が白血病への進展に関わることを示唆する報告がなされているが、鉄過剰と白血化との明確な関連性は明らかではない。近年、クエン酸回路に関わるIDH1/2の遺伝子変異が異常代謝産物である2-HGを産生させることが報告されている。この2-HGはDNAのメチル化を亢進させ、造血器悪性腫瘍の進展に関与している。一方、IRP1/ACO1は鉄過剰時には細胞質アコニターゼとして機能し、IDH1/2にイソクエン酸を供給する。これらのことから、骨髄細胞での鉄過剰が糖代謝の異常を引き起こし、DNAメチル化にも関与している可能性を考え、鉄短期投与鉄過剰マウス骨髄細胞において鉄過剰が糖代謝関連酵素の発現にどのような影響を与えるかに着目し、網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、グリコーゲン分解に関わる代謝酵素のグリコーゲン脱分枝酵素(Agl)およびホスホグルコムターゼ1(Pgm1)とIdh1の発現が亢進していた。 今年度、さらに詳細に解析するため、digital PCRを用いてそれら分子とAco1の発現解析を行ったところ、Idh1およびAco1の発現が有意に亢進していた。さらに、DNAメチル化は鉄過剰群で有意に上昇していた。また、2-HGについても検討したところ、鉄過剰群で有意に増加していた。これらの結果から、鉄過剰によるIDH1やACO1の亢進が2-HGの産生を増加させ、骨髄細胞においてDNAメチル化を亢進することが示唆された。 臨床的に輸血後鉄過剰症に近いモデルを作成するために、長期鉄投与マウスモデルとしてとしてC57Bl/6マウスに鉄デキストラン 10mg/dayを週に2回、8週間腹腔内投与した。本モデルでは対照群に比較して血清フェリチンが有意に増加し、骨髄細胞への鉄沈着も確認されている。今後本モデルマウスから採取した骨髄細胞を用いてさらなる検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は鉄過剰がもたらす骨髄細胞への糖代謝への影響を解析する検討であり、少なくとも鉄短期投与による鉄過剰モデルマウスでは糖代謝に関連する酵素の発現の変化が認められ、さらに2-HGの産生増加とDNAメチル化の亢進も確認されている。最終的な目的は長期鉄投与モデルマウスにおける解析であるが、モデルマウスの作成は終了しており、今後それから採取した骨髄細胞を用いた解析結果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、長期鉄投与モデルマウスから採取した骨髄細胞を用いて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、長期鉄投与モデルマウスを用いた網羅的遺伝子解析を当該年度中に行う計画であったが、その解析を本年度行う見込みとなったため、次年度に使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度中に長期鉄投与モデルマウスから採取した骨髄細胞を用いて網羅的遺伝子解析を含めた種々の解析を行う予定である。
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