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2016 年度 実施状況報告書

GATA1関連白血病幹細胞を維持する遺伝子発現制御機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K18395
研究機関東北大学

研究代表者

長谷川 敦史  東北大学, 加齢医学研究所, JSPS特別研究員(PD) (80747460)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードDS-AMKL / 白血病幹細胞
研究実績の概要

本研究では、ダウン症随伴急性巨核芽球性白血病(DS-AMKL)を支える白血病幹細胞において特異的な遺伝子発現プロファイルの解析を目的としている。
これまでに、白血病細胞を安定的に増幅・供給できる実験系を樹立するための、超免疫不全マウスにおける患者由来DS-AMKL細胞の異種移植系を立ち上げた。異種移植マウスにおいて、移植後10週目以降から、巨核球特異的CD41a表面形質を発現するAMKL様芽球の循環を確認することができた。CD34陰性分画移植群、またヘキスト高染色性細胞集団移植群において白血病発症を認めたことから、同分画における白血病幹細胞の存在が示唆された。
当該年度においては、CD34陰性分画中から白血病幹細胞が真に濃縮される分画を探索するため、抗がん剤(5-FU)への抵抗性を有する細胞集団を検出・単離し、異種移植実験を行った。CD45RAとCD49fを用いた分画条件において、5-FUへの抵抗性を示す集団が検出された。この結果に基づき、CD45RAとCD49fの各陽性・陰性分画を単離し、超免疫不全マウスへの移植実験を行ったが、どの分画に属する細胞集団であっても、白血病形成能を有することがわかった。このことは、CD45RAおよびCD49fでは白血病幹細胞を単離できないことを示している。しかしながら、5-FU抵抗性を有する全細胞の中から、他の指標を用いることで白血病幹細胞を単離できる可能性は残されている。
一方で、白血病幹細胞の性質を解析するうえでの対照群として、細胞バンク由来ヒトCD34陽性造血幹前駆細胞の異種移植マウスの樹立を試みた。本細胞はDS-AMKL細胞と同様に超免疫不全マウスに生着可能であるが、マウス体内では3世代以上の連続的な移植および幹前駆細胞分画の増幅は不可能であった。そのため解析の際には、新規細胞ラインからの異種移植マウスを用意する必要があることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成27年度までで、白血病細胞を安定的に増幅・供給できる実験系として、超免疫不全マウスへの、患者由来DS-AMKL細胞の異種移植系を立ち上げた。異種移植マウスにおいて、巨核球特異的CD41a表面形質を発現するAMKL様芽球の循環を確認し、また移植後10週目以降を至適解析時期と設定することができた。セルソーターによる白血病細胞の分画化・単離および移植実験により、CD34陰性分画および同分画中のヘキスト高染色性細胞集団を移植することで白血病発症を認めた。このことから、本DS-AMKLでは、CD34陰性分画中のヘキスト高染色性細胞集団における白血病幹細胞の存在が示唆される結果を得ることができた。
平成28年度までで、白血病発症マウスへの抗がん剤(5-FU)投与実験により、CD45RAおよびCD49fを用いて展開した分画中に、抗がん剤耐性を持つ細胞集団を検出した。しかしながら、これらの細胞表面形質発現パターンでは、白血病幹細胞が濃縮される分画とそうでない分画とを区別できないことがわかった。抗がん剤耐性という白血病幹細胞を特徴づける重要な性質を見出すことができたものの、その中から真の白血病幹細胞集団を同定する指標としての細胞表面形質の情報はまだ不十分である。また、白血病幹細胞の性質を解析するうえでの対照群として使用するための、細胞バンク由来ヒトCD34陽性造血幹前駆細胞の異種移植マウスの樹立に成功した。
DS-AMKL幹細胞の性質解明を行うには、幹細胞が濃縮される分画を同定し、効率よくサンプリングできるようにする必要がある。現段階ではそのための指標がまだ確立しておらず、当初の研究計画からは遅れていると判断される。しかしながら白血病細胞および正常ヒト造血細胞の異種移植系の樹立に成功しており、白血幹細胞分画同定のための指標となる情報を収集できる解析系が得られたことは成果のひとつである。

今後の研究の推進方策

ヒトDS-AMKL細胞の異種移植実験による細胞表面形質解析を引き続き行い、白血病幹細胞濃縮分画を探索する。抗がん剤抵抗性を持つ細胞集団が存在するという知見は、非常に有用な情報であるため、さらに細胞周期解析を組み合わせ、幹細胞に特徴的な性質を示す細胞集団を機能面から絞り込んでいく。
また並行して、ヒト疾患モデルとなるマウスを用い、造血幹細胞の機能に着目した解析から白血病幹細胞の機能に迫ることも検討している。GATA因子の質的・量的異常を有する遺伝子改変マウスにおける造血幹細胞の機能異常を解析し、特徴的な形質を明らかにする。造血幹細胞の特性に基づき、機能的類似性の観点から白血病幹細胞が濃縮される細胞集団の同定に迫る。最終的に、白血病幹細胞分画における遺伝子発現プロファイルを、RNA-Seqもしくはマイクロアレイにより網羅的に解析することで、非幹細胞集団との質的差異を生み出す分子機構を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

学会発表の為の旅費として申請していたが、研究進捗状況により、今年度の学会発表を見合わせた。当該年度中の実験に使用する物品についても、十分な量を購入していたため、未使用分を物品購入費として割り当てることができず、繰越が発生した。

次年度使用額の使用計画

フローサイトメトリー解析に用いる試薬、抗体類の購入費用とする。また、遺伝子発現解析のための試薬物品類の購入費用とする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] GATA1 activity governed by configurations of cis-acting elements2017

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Hasegawa, Ritsuko Shimizu
    • 雑誌名

      Frontiers in Oncology

      巻: 6:269 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fonc.2016.00269

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] GATA1 Binding Kinetics on Conformation-Specific Binding Sites Elicit Differential Transcriptional Regulation2016

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Hasegawa, Hiroshi Kaneko, Daishi Ishihara, Masahiro Nakamura, Akira Watanabe, Masayuki Yamamoto, Cecelia D Trainor, Ritsuko Shimizu
    • 雑誌名

      Molecular and Cellular Biology

      巻: 36(16) ページ: 2151-2167

    • DOI

      10.1128/MCB.00017-16

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] シス配列構造に依存した GATA1-DNA 結合様式修飾と転写活性調節2016

    • 著者名/発表者名
      長谷川敦史, 金子寛, 石原大詞, 中村正裕, 渡辺亮, 山本雅之, Cecelia D Trainor, 清水律子
    • 学会等名
      第89回日本生化学会大会
    • 発表場所
      仙台市
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-27
  • [学会発表] Cis-element configuration dependent dynamics in DNA-binding and transactivation activity of GATA12016

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Hasegawa, Hiroshi Kaneko, Daishi Ishihara, Masahiro Nakamura, Akira Watanabe, Cecelia D. Trainor, Masayuki Yamamoto, Ritsuko Shimizu
    • 学会等名
      The 20th Hemoglobin Switching Conference
    • 発表場所
      Pacific Grove, USA
    • 年月日
      2016-09-14 – 2016-09-18
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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