研究課題
近年、軟骨肉腫においてイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/IDH2の体細胞変異が高頻度に生じていることが報告された。本研究は組織特異的に変異型IDHを発現するマウスを作成し、軟骨組織における変異型IDHの機能解析を行い、軟骨腫瘍発生、進展メカニズムを解明することを目的とした。(1) 軟骨特異的IDH1,IDH2変異発現マウスの作成とその解析:軟骨組織特異的にIDH1、IDH2を発現するマウスを作成し、胎生期の軟骨組織において、変異型IDHにより産生されることが知られているD-2HGの濃度を解析したところ、いずれの変異マウスにおいても高度に上昇していることが確認された。一部の変異マウスは出生直後に死亡した。生後成長したマウスを3ヶ月齢、6ヶ月齢で解析したところ、変異マウスでは成長障害を認め、特にIDH2変異を発現するマウスにおいてその表現型が顕著であった。これらの変異マウスの軟骨組織を組織学的に解析したところ、正常な成長板軟骨において認められるカラム構造が破綻し、増殖軟骨細胞層に肥大軟骨細胞様の軟骨細胞が混在しており、軟骨細胞分化の障害が生じていることが明らかとなった。さらに成長板軟骨近傍に内軟骨腫様の軟骨塊を認めた。(2) p53遺伝子欠損マウスとの掛け合わせによる軟骨腫瘍形成マウスモデルへの影響の検討: (1)で解析したIDH1/IDH2変異マウスとp53-floxマウスとの掛けあわせを行い、これらの遺伝子の相互作用について確認をした。生後3ヶ月齢での解析においては、内軟骨腫様軟骨組織の明らかな悪性転化は確認できなかった。(3)変異型IDH阻害剤による軟骨腫瘍抑制効果の検討: 商業的に入手可能な変異型IDH1に対する阻害剤をIDH1変異マウスに腹腔内投与しその腫瘍抑制効果を確認した。内軟骨腫様腫瘍塊の明らかな縮小は認めなかった。
すべて 2016
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