研究課題/領域番号 |
15K18407
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 宣宏 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定助教 (60742377)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腫瘍内不均一性 / 上皮間葉転換 (EMT) / NFYA / がん幹細胞 / 乳癌 |
研究実績の概要 |
乳癌は、癌細胞の起源によりいくつかのサブタイプに分類される。乳癌において、腫瘍増殖および悪性化を促進するために異なるサブタイプ間での協同作用が重要であるという”Cancer heterogeneity”モデルが提唱されている。多くの乳癌は単一のサブタイプから発生することから、『どのように不均一性を獲得するのか』など、このモデルの制御機構は不明な点が多い。我々は、サブタイプ間での上皮性・間葉性の違いに着目し、上皮間葉転換(EMT)によりサブタイプ転換が誘導され、不均一性が形成・維持されていると考え、解析を行っている。我々はこれまでに、EMT進行中および乳癌サブタイプに依存してスプライシングバリアントの発現をスイッチさせる遺伝子としてNFYAを同定した。本研究では、NFYAの機能を明らかにすることで癌の不均一性獲得機構の解明を目指す。 我々は、NFYA両バリアントが協調的に乳癌サブタイプの転換を促進することを明らかにした。さらに、CRISPR/Cas9システムを用い、NFYAノックアウト細胞を作製し、NFYA各バリアントの機能を明らかにした。間葉系NFYAノックアウトは、細胞増殖を抑制し、さらに、in vivoにおける腫瘍増殖も抑制することを明らかにした。しかし、上皮系NFYAはそれらの機能を示さなかった。これらのことはNFYA各バリアントが異なる役割を果たし、サブタイプ転換を促進していることを示唆する。さらにこれら異なる機能のメカニズムを明らかにするためにChIP-seqアッセイにより各バリアントの転写標的遺伝子の同定を試みた。この結果については現在解析中である。さらにこれらの現象をin vivoで解析するためのマウスモデルの構築にも取りかかり、上記の機能をin vivoにおいて観察できるシステムを確立した。今後in vivoマウスモデルを用い、詳細な解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に目標としていたNFYA各バリアントの機能解析については、NFYAノックアウト細胞を作製し、機能解析することで期待される結果を得ることができた。各バリアント特異的な転写標的遺伝子の同定に関しては、ChIP-seqアッセイを行い、現在バイオインフォマティクス解析を行っているところである。さらに、二年目に計画していたin vivo マウスモデルの構築については、前倒しして始めたところ、期待される表現型を観察可能な系を構築でき、今後の詳細な解析に期待が持てる。以上のように現在までは当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画通り推進し、NFYAスプライシングバリアントによるサブタイプスイッチング制御を介した癌の不均一性形成過程の制御メカニズムをin vivoマウスモデルを用い調べていく。我々が、新たに構築したマウスモデルを用いた予備実験では、NFYAバリアントの発現パターンに依存した表現型が観察できているため、問題なく遂行できると思われる。同時に、NFYA各バリアントの転写標的遺伝子の同定および不均一性形成過程における機能解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は2点ある。1点は、ノックアウト細胞の作製および解析が効率的に行えたことにより当初の予定よりも研究費を抑えられたためである。もう1点は研究を進めるため予定していた学会発表を次年度に繰り越したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
新規in vivoマウスモデルを確立することができたので、未使用額をマウスモデルを用いた詳細な解析に用いる計画である。また、研究成果を公表する経費にも使用する予定である。
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