研究課題/領域番号 |
15K18414
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石川 千恵 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 助教 (90542358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 成人T細胞白血病 / HTLV-1 / ISL-1 |
研究実績の概要 |
ISL-1(insulin enhancer binding protein-1)はLIMドメインやホメオドメインを有する転写因子である。インスリン遺伝子の発現調節領域に作用する因子として発見されたが、最近、発がんとの関連が報告された。本研究ではISL-1のATL(成人T細胞白血病)発症・進展への関与を解明するべく解析を行っている。ISL-1の発現についてT細胞株でRT-PCR法により検討した。HTLV-1感染T細胞株では8細胞株のうち6細胞株でmRNAレベルでのISL-1発現が認められた。一方、非感染T細胞株では検討した3細胞株のいずれも発現を認めなかった。また、ウェスタンブロッティングによる解析では、mRNAレベルで発現の見られた6細胞株中3細胞株でISL-1タンパク質の発現を認め、これらはいずれもHTLV-1の形質転換因子であるTax発現株であった。健常人末梢血単核球にHTLV-1を感染させたところISL-1 mRNAの発現誘導を認めた。しかしながら、ウイルス遺伝子TaxによるISL-1誘導に関して、mRNA発現誘導やプロモーター活性の増強を検討したが、Tax依存性のISL-1発現誘導は認められなかった。非感染T細胞株JurkatにISL-1発現プラスミドを導入したところ有意な増殖能の増加を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の解析の結果、(1)HTLV-1感染によってT細胞にISL-1発現が誘導されること、(2)HTLV-1感染T細胞株にISL-1が高頻度に発現していること、(3)T細胞株にISL-1が発現することで細胞増殖能が増加することを確認した。なお、ISL-1発現誘導においてTaxの関与はないことがわかった。これらのことよりATL発症におけるISL-1の重要性が示唆され、ウイルス感染による発がん機構解明のための研究進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞株JurkatにISL-1を強制発現させることで細胞増殖能が上昇したため、今後マイクロアレイ解析を行い、ISL-1の標的遺伝子を網羅的に解析する。また、標的遺伝子のプロモーター解析を行い、ISL-1の転写因子としての機能を検討する。ISL-1の発現誘導にはTax以外のウイルスタンパク質の関与が示唆されるため、HBZを含めたTax以外のウイルス因子によるISL-1発現誘導を検討する。ISL-1遺伝子プロモーター上には、STAT3やc-Jun結合配列が存在し、これらの転写因子がISL-1の発現制御に関与することが知られている。ISL-1発現HTLV-1感染T細胞株を用いて、ゲルシフトアッセイによりISL-1遺伝子プロモーター領域におけるSTAT3やc-Junの結合を確認する。さらに、JAKやSTAT、JNK阻害剤をISL-1発現HTLV-1感染T細胞株に作用させることでISL-1発現制御機構を検討する。また、ATL発症危険群予測因子としてのISL-1の可能性、及びISL-1を標的分子とする治療の可能性について検討する。
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