(1) 多発性骨髄腫細胞株OPM2において、IRF4、MYC遺伝子のプロモーター領域に結合しIMiDs処理により変動する転写因子群の網羅的同定を試みた。質量分析により極めて多数のタンパク質が同定された。IMiDs処理によって結合量が変化したタンパク質も極めて多数であり、事前の予想よりもずっと多かった。 (2) 同定された因子群から、IMiDsの薬効に関与する因子を絞り込むために、shRNA library screeningによる網羅的なノックダウン実験を行った。実験計画においては(1)で同定された因子群を対象としたFocused shRNA libraryを行う予定であったが、候補因子が極めて多数だったことから、計画を変更し全遺伝子を対象としたスクリーニングを行った。この結果、IMiDsのprimary targetであるCRBNを含む遺伝子リストを得た。しかし、これらの遺伝子に対して個別ノックダウンによるvalidationを行った所、ノックダウンが致死である遺伝子が多く、IMiDsの薬効との関わりを個別の実験により確認することが困難な遺伝子が大半を占めていた。この結果から、 (1)で得た候補因子群から、shRNA library screeningによりIMiDsの薬効に関与する因子を絞り込むという目標は、現在の所、達成されていない。 (3) IRF4、MYCの発現を制御する信頼性の高い遺伝子リストは得られていないが、同定された因子の中には、興味深い転写関連因子が複数含まれていた。そこで、これらの因子について、個別にIRF4やMYCの発現への関与、IMiDsの薬効への関与を検証した。その結果、IRF4とMYCの発現を制御する因子やIMiDsによる抗骨髄腫活性に関与する因子が多数含まれており、その詳細な分子メカニズムを解析中である。
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