研究実績の概要 |
本研究では、がん転移促進因子として同定されたMerm1/Bud23の核小体でのリボソーム制御機能とがん転移の関係を明らかにし、新規転移抑制法を提案することを目的としている。 ①核小体局在と転移制御の関係: Merm1は一部が核小体に局在する。強い核小体局在シグナルRev-NoLS付加体、核小体局在にも必要な核移行シグナルを部分的に削ったpartial NLS変異体, 全部欠損させたNLS欠損変異体のMerm1を発現させた細胞の作製を進めた。ウィルスにより発現ベクターを細胞へ導入したが、NLS欠損変異体はほぼ発現せず、NoLS付加体は非常に発現レベルが低かった。ウィルス感染の繰り返しと、細胞種の検討などを行い、NoLS付加体については改善した発現細胞を得ることができた。これらを用いて核小体局在と解析を進めている。 ②Merm1によるrRNAメチル化と転移制御の関係: Merm1のメチル化ドメインの解析のために、Merm1高発現細胞株A375Mを用い、Crispr-Cas9系でMerm1-KOの作製を行った。Merm1のKO効率は他の対照因子に比べて非常に低く、片alleleのみのKOと思われる低発現クローンばかりが取れたため、Merm1-KOは細胞増殖への影響が大きいと推察された。A375M親株とMerm1の低発現クローンを使って、rRNAのメチル化へのMerm1の関与を検討した。出芽酵母Bud23のメチル化サイトG1575は、rRNA構造からヒトの18S rRNAのG1639に対応することが予測されたので、逆転写反応とqPCRを利用したメチル化レベルの検討を行った。しかしながら、Merm1低発現細胞においてG1639を含む配列のメチル化に有意な差は見出せなかったが、他のグループから、このサイトのメチル化にMerm1が関与することがノックダウンにより示された(Zorbas C et al. 2015 MBoC)。すでにMerm1による転移促進に対して抑制が見られたA375M細胞を用いたsiRNAによるノックダウンで、このrRNAメチル化が影響されるかは検討する予定である。
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