研究課題/領域番号 |
15K18422
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
竹島 秀幸 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40432497)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
SWI/SNFなどのクロマチンリモデリング因子は様々ながんにおいて不活化されている。その一方で、SWI/SNFの不活化がどのように発がんに関与するかの詳細は不明である。本研究では、1)SWI/SNF不活化により遺伝子発現状態が多様なクローンが産生されることを解明すること、2)がん遺伝子の活性化環境に適応した、即ち、細胞老化誘導機構が破綻したクローンが選択的に増殖することを解明することを目的とした。 1年目の本年度は、SWI/SNF不活化細胞株を樹立した。当初予定していたshRNAによるノックダウンではSWI/SNF機能の不活化が不十分であることを考慮し、CRISPR/Cas9システムを用いノックアウトを行った。293FT細胞株を用いて、SWI/SNFの活性サブユニットであるSMARCA2、SMARCA4のシングルノックアウト細胞株及びダブルノックアウト細胞株を樹立した。 また、SWI/SNF標的遺伝子探索のため、SMARCA2ノックアウト細胞株、SMARCA4ノックアウト細胞株及びコントロール細胞株におけるゲノム網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、SMARCA2ノックアウト細胞株では、32遺伝子における発現上昇及び25遺伝子における発現減少が認められた。SMARCA4ノックアウト細胞株では、63遺伝子における発現上昇及び77遺伝子における発現減少が認められた。SMARCA4ノックアウトにより発現減少する遺伝子のうち14遺伝子について、SWI/SNFのターゲット遺伝子であるかどうかを調べるために、SWI/SNF構成因子の1つであるBAF155の結合の有無を調べたところ、解析した全ての遺伝子で結合が認められた。今後、これらの遺伝子を指標に、SWI/SNF不活化により遺伝子発現状態が多様なクローンが産生されることを示す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画のうち、SWI/SNF不活化細胞株の樹立、SWI//SNF標的遺伝子の同定を予定通り完了した。また、SWI/SNF不活化により遺伝子発現状態が多様なクローンが産生されるかどうかについては現在解析を進めているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、以下の通り研究を推進する予定である。 (1)細胞老化機構が破綻したクローンの可視化システム構築 平成27年度に樹立したSWI/SNF不活化細胞株をもとにして、細胞老化機構が破綻したクローンの可視化システムを構築する。具体的には、i)発現誘導型の活性化型がん遺伝子(細胞老化の誘導要因)を導入する。がん遺伝子の下流には、IRES配列及び緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を連結し、がん遺伝子を活性化させた細胞(細胞老化誘導スイッチが入った細胞)は緑色に光らせる。さらに、ii)細胞老化の際に発現誘導されることが確立しているp16遺伝子のプロモーター下流に赤色蛍光タンパク質(DsRed)を連結して導入、老化が誘導された細胞は赤色に光らせる。通常の細胞では、がん遺伝子の発現誘導により老化が誘導されるため、緑色と赤色の両方の蛍光を発する。一方で、細胞老化機構が破綻した細胞は緑色蛍光のみを発する。 (2)細胞老化機構が破綻したクローンの選択的増殖の解析 (1)で樹立した細胞老化機構の破綻を可視化できるSWI/SNF不活化細胞株(多様なクローンが産生される)またはコントロール細胞株において、活性化型がん遺伝子を発現させ、i)がん遺伝子の発現誘導から数日後の解析では、SWI/SNF不活化をした場合により多くの緑色蛍光のみを発するクローンが産生されることを明らかにする。また、ii)発現誘導から長期間経過後には、緑色蛍光のみを発するクローンが選択的に増殖することを明らかにする。
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