研究課題/領域番号 |
15K18424
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
星野 大輔 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 研究員 (30571434)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 浸潤 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、エクソソームのがん浸潤亢進活性とがん悪性化の関係を明らかにするために、非腫瘍性乳腺由来細胞株とこれを基に作製した悪性化モデル株を用いて解析する。 平成27年度は、使用するモデル株の作成を行った。具体的には、非腫瘍性乳腺上皮由来MCF10A株を基に、これに野生型PI3キナーゼあるいは恒常活性化型PI3キナーゼを過剰発現した株(MCF10A-PI3KあるいはMCF10A-PI3K(H1047R)を作成した。 まず、これらの細胞の浸潤突起形成能を調べたところ、H1047R 株のみ浸潤突起形成能が増加していた。次に、H1047R細胞株が分泌するエクソソームを細胞培養液から精製し、MCF10A 親株に添加後、浸潤突起形成を調べたところ、浸潤突起形成能に差はなかった。続いて、がん細胞の浸潤誘導活性を、ボイデンチャンバーを用いたマトリゲル浸潤アッセイおよびI型コラーゲン浸潤アッセイにより定量したところ、H1047R株でのみ浸潤能が亢進していた。次に、H1047R細胞株が分泌するエクソソームを細胞培養液から精製し、MCF10A 親株に添加後、浸潤能を調べたところ、浸潤能が増加した。以上のことから、H1047Rの分泌するエクソソームは、浸潤突起形成を可能とすることはできなかったが、がん細胞の浸潤能を促進できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浸潤突起形成促進に関しては予想どおりの結果が得られなかったが、その他は当初の予定どおり概ね、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、H1047R 由来エクソソームを受容したMCF10A細胞内で亢進されるシグナル伝達経路を、申請者が確立した RPPA 解析の系を適用することで網羅的に同定する。具体的には、悪性度の高いMCF10A-PI3K(H1047R)のエクソソームに対する感受性が高い細胞と低い細胞におけるエクソソームによるシグナル伝達経路の活性化の違いを解析する。 そこで得られた情報を基に、申請者が確立しているがん浸潤数理モデルの拡張に取り組む。ここで拡張した数理モデルを“キーパス解析し、エクソソーム依存的な浸潤能亢進に重要な分子群を、in silico 解析によって明らかにする。これにより、がん細胞が悪性形質を獲得する過程で生じる分子間相互作用とこれにより惹起されるシグナル伝達カスケードの変動の全体像を、分子間相互作用ネットワークの変化として可視化する。
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