研究課題
KallikreinやKallikrein-related peptidase (KLK)ファミリータンパク質はセリンプロテアーゼの一種であり、がんの病態においても、その機能や発現が注目されている。特にKLK3はProstate specific antigen (PSA)と呼ばれており、前立腺がんの腫瘍マーカーとして臨床ですでに実用化われている。しかしながら、乳癌患者のサブタイプによるKLK3の発現の違いや、特にトリプルネガティブタイプにおけるKLK3の発現と予後の関連に関しては未だ解析されていない。本研究では、およそ2000名の乳癌患者のマイクロアレイデータから294人のトリプルネガティブタイプ患者を抽出し、KLK3の発現と生存日数でカプランマイヤー曲線および多変量解析を行った。トリプルネガティブタイプ患者ではKLK3高発現群は予後不良であることが明らかになった。この結果からKLK3はトリプルネガティブタイプ乳癌の予後予測可能な腫瘍マーカーとして用いることができる可能性が示唆された。さらに、乳がんの悪性化にたいするKLK3のIn vitroにおける機能を検証するために、乳癌細胞株におけるKLK3の発現量を調べた。その結果、MCF7,BT20, MDA-MB231, MDA-MB-436 における内在性KLK3のかなり発現量が低かった。
3: やや遅れている
患者組織mRNAを用いたマイクロアレイ解析の結果から、乳癌細胞株(特にトリプルネガティブ乳癌)においては内在性にKLK3が高発現していることが予想され、これらの細胞株においてKLK3を発現抑制することで機能変化を調べる予定であったが、研究室に所持している乳癌細胞株では発現がほとんど見られなった。現在、他の乳癌細胞株を入手する準備を行っている。
乳癌における内在性KLK3の機能を検討するために、KLK3の高発現する乳癌細胞株を引き続き探索する。さらに、培養条件によってKLK3の発現が変化することを期待して、癌幹細胞が濃縮できるsphere assayの培養条件でKLK3の発現上昇がみられるか検討行う。またFACSによりCD24lowCD44highの画分でのKLK3の発現も検討する。さらにKLKファミリーには他の分子に関しては、乳癌細胞株での発現が報告されているので、それらファミリー分子に関しても検討を広げる。
KLK3を高発現する乳癌細胞株が手に入らず、この細胞を用いて実施を予定していたInvasion assayやFACSなど実験が平成27年度中に実施できなかったため。
新たに乳癌細胞株を入手し、KLK3を高発現する乳癌細胞株を同定した後、平成27年度に予定していた実験を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Cancer Research
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