前年度までに同定された膠芽腫診断マーカー候補20分子は初発膠芽腫の治療前、治療後、再発時においてそれぞれ高値、低値、高値を示すもので発現が2倍以上異なるものであった。膠芽腫は希少がんのひとつでありこれらの中で、マーカーとして妥当性の高いものの抽出を試みた。ひとつめの方法として、低悪性度の腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫など)で同様に先端プロテオミクスSWATH解析を行い、候補分子が膠芽腫に高く低悪性度腫瘍に低いパターンを示すものを抽出した。もうひとつの方法は、各時点での腫瘍体積との相関を示すものとした。腫瘍体積はMRI画像において最も腫瘍の描出が把握しやすい造影T1WI画像を用いた。具体的には腫瘍が描出される各スライス(5mm幅)で解析ソフトで計測した面積の和に5mmを乗じた結果を腫瘍体積とした。その結果、20分子から4種類にまで絞り込まれた。これらの候補分子の膠芽腫における局在を免疫組織化学にて行っているが、有意な染色性が得られていない。原因としては候補分子が分泌蛋白であることや生物学的半減期が短いことが考えられた。SWATH法が免疫組織化学などの従来の方法よりも微量な蛋白質まで高感度に定量できることが改めて明らかとなったといえる。対応としては使用する抗体の見直しと免疫組織化学に代わり凍結検体から得られるRNAを用いた定量的RT-PCRおよび蛋白を用いたウエスタンブロットでの解析を行っている。今後さらに研究を継続していく予定である。
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