研究課題
肺扁平上皮癌の治療標的として近年FGFR遺伝子が注目されており、本研究室でFGFR阻害薬AZD4547高感受性の肺扁平上皮癌細胞株を同定し、本研究室でin vitro耐性化を行い耐性株を樹立した。耐性化の機序を調べるために、耐性株に対してマイクロアレイ解析およびRNA sequenceを行い、もとの細胞株と比較することで遺伝子発現量の変化や新規に生じた遺伝子変異を検索した。併せて、各種受容体型チロシンキナーゼ阻害薬や代表的な下流経路の阻害薬等をAZD4547と併用して投与することで、耐性株において相乗効果の見られる薬剤やシグナル伝達経路を検討した。結果として、FGFR遺伝子自体に生じた変異もなく、新規に生じた遺伝子変異の中に明らかに耐性に関わる遺伝子は同定出来ず、また耐性株において明確な相乗効果を認めるキナーゼ阻害薬も同定出来なかった。しかし、もとの細胞株と比較して耐性株において高発現している遺伝子の中に肺癌の形質を変えうる転写因子を認めたため、同遺伝子に対するsiRNAを作成した。このsiRNAはAZD4547との相乗効果は見られなかったが、耐性株においてコントロールと比較し有意な増殖抑制効果を認めたため、耐性化に関わる責任遺伝子のひとつと考えられた。現在、その遺伝子が引き起こす耐性化機序についての追加実験および論文投稿準備中である。また、併せて付随する研究で得られた成果についての学術発表を行った。本研究を引き続き進めていくことで、分子標的治療薬耐性化の機序に対する新たな知見が得られると考えられる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Jpn J Clin Oncol.
巻: 17 ページ: 1-8
10.1093/jjco/hyx031.