研究実績の概要 |
本研究は、抗がん剤抵抗性の骨肉腫を対象に、その抵抗性のメカニズムを解明すること、新規治療法を開発することを目的としている。先行研究で同定した抗がん剤抵抗性に関わるタンパク質やマイクロRNAなどのバイオマーカーを標的とし、その阻害剤の抗腫瘍効果について検討を行った。 抗がん剤奏効性バイオマーカーであるPRDX2は、治療抵抗例で発現が高く、その阻害剤であるconoidin Aについて、骨肉腫に対する抗腫瘍効果とそのメカニズムの解明を行った。conoidin AがPRDXの阻害剤であることは報告されているが、悪性腫瘍に対する抗腫瘍効果およびその有用性については明らかにされていない。そこで本研究では骨肉腫細胞株(143B,KHOS)・抗がん剤抵抗性骨肉腫細胞株(KHOS-R)を用いて、conoidin Aの抗腫瘍効果についての検討を行った。そしてconoidin Aが骨肉腫細胞株・抗がん剤抵抗性骨肉腫細胞株に対して、抗腫瘍効果を有することを確認した。特異抗体を用いたウエスタンブロットでは、conoidin AがPRDX2の発現を抑制し、腫瘍細胞のアポトーシスを促進する可能性が考えられた。さらに従来の抗がん剤にconoidin Aを加えることにより、相乗的な抗腫瘍効果が得られることを明らかとした。 また、骨肉腫における治療抵抗性のメカニズム解析・治療標的探索として、チロシンキナーゼを中心とした発現解析を行った。骨肉腫はheterogeneityの強い腫瘍であることが一般的に知られており、全例に共通した遺伝子変異は認められなかったが、チロシンキナーゼの発現異常を認める症例を一部に認め、これらは新規治療標的の候補と考えられた。一方、抗癌剤抵抗性に関わる遺伝子として一般的なP-糖タンパク質(ABCB1、MDR1遺伝子産物)やMRP1 、BCRPについては明らかな発現異常を認めなかった。
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