ALK融合遺伝子は2007年にわが国で発見された肺癌のoncogeneであり、非小細胞肺癌の約5%の頻度である。ALK融合遺伝子を有する症例にはcrizotinib、alectinibやceritinibなどのALK阻害剤が著効することが知られている。また、さらに次世代のALK阻害剤も開発されており、臨床応用されることが期待されている。しかしながら、多くの症例で耐性獲得が問題となっており、耐性獲得機序の解明とその克服が喫緊の課題である。 我々はALK阻害剤に対して耐性を獲得した症例に対して再生検を行い、耐性獲得機序の解明と耐性獲得後の治療戦略について検討した。 Crizotinib、alectinibおよびceritinibに対する耐性獲得機序として、ALK遺伝子の新たな二次変異 (I1171T、I1171N、およびG1123S)を同定した。さらに、Alectinibに対して耐性獲得後に肝生検を行い、MET増幅を同定した。c-MET阻害剤として開発されたcrizotinibが著効したことから、MET経路の活性化がalectinib耐性を惹起していると考えられた。 これらの結果は、あるALK阻害剤に耐性獲得後に次のALK阻害剤を選択するうえで重要な情報であると考えられる。Ceritinib耐性を惹起するG1123Sはalectinibによって耐性克服可能なことは、新たなALK阻害剤のsequenceを考えるうえで重要な知見である。また、alectinib に対する耐性獲得後の肝生検の結果、MET遺伝子増幅が見られた。元来、c-MET阻害剤として開発されたcrizotinibが著効したことを考慮すると、MET遺伝子増幅がalectinib に対する耐性獲得に関与していると考えられる。今後、さらなる耐性獲得機序の同定と、それに基づいたbest sequenceの研究が必要である。
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