研究課題
ヒト一人が1日に分泌する唾液量は1~1.5Lと見積もられており、唾液細菌叢の一部は常に腸内に到達していると考えられる。本研究は、ヒト唾液細菌叢に内在し腸内の炎症に関わる細菌の探索・同定とその機能の解明を目的とした。先行研究として、健常者と様々な疾患患者の唾液細菌叢の構造を高速シークエンサーを用いた網羅的16S解析によって調べた結果、炎症性腸疾患(IBD)患者と健常者の唾液細菌叢の間に有意な違いがあることを発見した。そこで本研究では、IBD患者と健常者の唾液細菌叢を無菌マウスに投与することで、ヒト唾液細菌種の定着したノトバイオートマウスである「ヒト唾液マウス」を作成した。ヒト唾液マウスの腸内容物を解析した結果、投与した唾液に含まれる10~20%程度の細菌種が腸内に安定して定着可能であることが明らかになった。作成したヒト唾液マウスの大腸粘膜固有層における炎症性T細胞の集積量の解析を行った結果、唾液マウスでは無菌マウスに比し炎症性サイトカインを生産するTh1およびTh17細胞の割合が増加していた。菌叢の希釈や分離を経て無菌マウスへの再投与を行うことで、炎症に関与すると考えられる複数の細菌種を絞り込むことに成功した。これらの炎症関連細菌群のゲノムを解読しコンプリートゲノム情報を取得した。現在は、取得したゲノムを用いた比較ゲノム解析を行っており、これらの細菌種が腸内での炎症に関わる作用機序の解明を進めている。
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DNA Res.
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https://doi.org/10.1093/dnares/dsx001