本研究計画では、高変異型 RNAウイルスのゲノム変異に影響を受けない治療標的探索システムの構築を通して、ウイルスプロテオミクス・大規模Kinome活性プロファイルの技術開発を進めた。 平成28年度においては、先行研究の約3倍高効率にチロシンリン酸化ペプチドを濃縮可能な実験系を開発し専門誌に報告を行った。具体的には、免疫沈降ビーズからのチロシンリン酸化ペプチド溶出条件と、解析サンプルからの抗体除去、ならびに質量分析計の条件検討を行った。続けてチロシンリン酸化プロテオミクスと、既存の網羅的リン酸化プロテオミクスを組み合わせた大規模Kinome活性プロファイルを進めた。実験モデルとして、分子標的薬Cetuximab耐性大腸がん細胞株を使用し、Kinome活性状態を感受性細胞と比較した。その結果、ゲノム変異を伴わない活性化キナーゼ候補群を多数抽出し、その内いくつかのキナーゼについては特異的阻害剤処理による耐性細胞の細胞増殖抑制に成功した。Cetuximab耐性大腸がん細胞株への大規模Kinome活性プロファイルについては現在論文投稿中である。 一連の結果から、本研究計画で構築した高深度リン酸化プロテオミクス解析系を用いることでゲノム解析では捉えられなかった新規分子標的の探索へつながる事が強く期待された。今後、構築したKinome解析系をHCVゲノム複製細胞解析に適用し、治療標的の探索・他高変異型RNAウイルス実験系への応用を進める予定である。
|