研究課題
これまで、カナダ・トロント大学、マウントシナイ病院、米国・ハーバード大学らとの共同研究により、DNAバーコード、次世代DNAシーケンシング、酵母ツーハイブリッド (Y2H) 法を組み合わせて生体内のタンパク質間相互作用を高速に同定するBarcode Fusion Genetics-Y2H法を開発した (Yachie et al 2016 Molecular Systems Biology)。昨年度までに本手法によって一人の研究者が2-3週間程度で250万タンパク質ペアから高品質タンパク質インタラクトームを同定できることを示し、ヒト中心体、細胞周期およびがん関連遺伝子、腫瘍ウィルスがターゲットとするヒトタンパク質間の相互作用を計測した。今年度はこれをさらに拡張するために、ヒトORFコレクションをプール化して一斉にY2H発現ベクターを作成し、これを一斉にバーコード化、ORFとバーコードの組合せをナノポアシーケンシングによって同定する手法の開発を進めた。一斉にDNAバーコード化を可能にするための新たなY2H発現用Gateway Destinationベクターの開発、ヒトORFをプール化したGateway Cloning法の開発を行った。また本手法を検討すると同時に、ヒト、出芽酵母、分裂酵母における異種間の核膜孔複合体およびプロテアソーム複合体の計測とその進化を議論する。このために、それぞれの生物種における核膜孔およびプロテアソーム関連ORFクローンおよびタンパク質相互作用形成のポジティブコントロールとなるORFクローンを各リソースから得て、新たに構築したY2H発現ベクターに導入した。
2: おおむね順調に進展している
BFG-Y2H法について高い有効性、拡張性、精度を示すことができ、昨年度までに成果を論文発表することができた。同手法をさらに拡張するための実験計画が順調に進行している。
BFG-Y2H法をさらに拡張するために、ヒトORFコレクションをプール化して一斉にY2H発現ベクターを作成し、これを一斉にバーコード化、ORFとバーコードの組合せをナノポアシーケンシングによって同定する手法の開発を進める。これによってDNAバーコード化されたY2Hベクターのクローン化が必要なくなり、さらに高速なインタラクトームスクリーニングの実現が期待できる。また任意の組織、細胞サンプルで発現するトータルRNAから一斉に発現量によるバイアスがノーマライズされたバーコード化遺伝子クローンライブラリープールを合成する手法を開発する。ヒト遺伝子それぞれについて特異的なDNAバーコード標識されたRNA逆転写用プライマーを並列合成し、各プライマーの存在比が均質のプライマープールを利用してトータルRNAサンプルを一斉に逆転写する。さらに、ここから得られたバーコード化遺伝子クローンライブラリープールをY2H用発現ベクターに一斉に導入し、酵母細胞の一斉形質転換を経てBFG-Y2H法で解析可能なバーコード化Y2H発現酵母細胞プールを一斉に得る。パーソナルインタラクトーム同定に資する技術開発を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件)
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