研究課題
本申請研究は、NF-κB活性化経路において、機能重複しているCYLD, OTULIN, A20の3つの脱ユビキチン化酵素(DUB)の中で、CYLDの果たす役割を解明する目的で、CYLDの活性に特異的な低分子阻害剤の開発を目指した。平成27年度は、組換えCYLDの直鎖テトラユビキチン鎖(M1Ub4)の切断を、AlphaScreen法によって簡便かつ迅速に検出するアッセイ系を構築し、このアッセイ系を用いて、東京大学創薬機構より分与頂いた9,600化合物より2種類のヒット化合物を得ている。平成28年度は、この2種類の化合物のうち、より特異性が高く、かつ細胞毒性が低い化合物をその化学構造からSubquinocinと命名し、更に詳細な解析を行った。Subquinocinはin vitroにおいてCYLDと同じファミリーに属するUSP5およびUSP15の活性を有意に阻害したが、異なるファミリーであるOTULINは阻害しなかった。またin vitroでの詳細な解析から、SubquinocinはCYLDとM1Ub4の結合は阻害しない一方で、CYLDの活性部位を阻害していることが明らかとなった。さらに培養細胞を用いた解析から、SubquinocinがNF-κBの活性化を有意に上昇させること、TNFα刺激依存的に形成されるRIPのポリユビキチン鎖量を増大させることも明らかとなった。これらの現象はCYLDノックアウト細胞では認められないことから、SubquinocinはNF-κB活性化経路において、主にCYLDの活性を阻害することで同経路のネガティブフィードバック機構を減弱させ、結果として活性化へと導いている可能性が強く示唆された。今後、Subquinocinの詳細な結合部位をin silicoドッキングプログラムと生化学的解析を用いて明らかとする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
PLoS Pathogen
巻: 13 ページ: e1006162
10.1371/journal.ppat.1006162.
Biochim Biophys Acta
巻: 1863 ページ: 2766-2783
10.1016/j.bbamcr.2016.08.010.
Nature Communications
巻: 7 ページ: 12547
10.1038/ncomms12547.
Nucleic Acids Research
巻: 44 ページ: 8621-8640
10.1093/nar/gkw512
PLoS One
巻: 11 ページ: e0156718
10.1371/journal.pone.0156718
巻: 11 ページ: e0156716
10.1371/journal.pone.0156716