研究課題
細胞内のRNAを解析する上でRNAを抽出する操作は必須の手法である。RNAの抽出方法として、汎用されるAGPC法はRNA-seqなどをはじめとして、様々なアプリケーションに利用される。私たちの研究室では、パラスペックルと呼ばれる核内構造体の骨格として働くNEAT1 lncRNAを解析する中で、このNEAT1がAGPC法で抽出されづらいことを見出し、これを”難溶性”と呼び、このような性質を持つRNAを”難溶性RNA”と命名した。種々の方法を試みた結果、NEAT1は、注射針に100回程度通すことや熱処理によって可溶化することを見出した。さらに、このNEAT1の難溶性に影響を与えるタンパク質を同定するため、ヒト一倍体細胞株HAP1を用いて、20種類以上のパラスペックルタンパク質ノックアウト細胞株を樹立した。これらを用いた解析の結果、いくつかのパラスペックルタンパク質(プリオン様ドメインを持つタンパク質を含む)が難溶性を与えていることが明らかとなった。さらに、NEAT1の特定のRNA領域を欠失させると、難溶性が低下したことから、この領域と同定したパラスペックルタンパク質が結合することで難溶性を生んでいる可能性が示唆された。加えて、この領域はパラスペックル形成に必須の領域であったことから、この難溶性と構造体の形成に関連があることが示唆された。そこで、この難溶性を持つRNAをRNA-seqを用いて網羅的に探索すると、多様なRNA種が同定され、少なくともこれらのうち一部は、構造体を作るRNAの候補であると考えられた。さらに複数の細胞株やストレス条件下における難溶性RNAをRNA-seqを用いて解析した結果、それぞれ異なるセットの多様なRNAが同定されたことから、難溶性RNAは細胞特異的なマーカーとして利用できる可能性が示唆された。主な成果は論文として公表した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
The EMBO Journal
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