繊毛虫テトラヒメナは単一の細胞質内に体細胞系列である大核と生殖核である小核をもつ.小核は有性生殖(接合)が始まると減数分裂を行い,4つの半数体核となる.これら 4 核のうち 1 核が選択されて配偶核へと発達し,残りの 3 核はオートファジーにより除去される,この過程において,減数分裂を終えた直後の全ての半数体核に γH2AX が出現すること,そして 1 核において γH2AX が消失し,この核が配偶核へ発達することを明らかにしている.この一連の現象について,我々は「配偶核の成熟に不可欠な一過性の DNA 二重鎖切断(DSB)を介した配偶核ゲノムの初期化:リプログラミング」と仮定し,その分子メカニズムの研究を進めてきた.これまでの本申請研究の進展により,半数体核生じた γH2AX とは,半数体核ゲノムを 2.5 Mbp程度に断片化する DSB への応答であること,そして配偶核へ発達する DSB の修復された 1 核では,γH2AX 消失に続いて新生クロマチンタンパク質の蓄積を示すエピジェネティクス指標が現れることを明らかにしてきた.2017 年度の研究では,クロマチンタンパク質の蓄積に伴うクロマチンの構造的変化を明らかにするため,テトラヒメナのゲノムに含まれる主なクロマチン再編成因子オーソログの候補を抽出して,それら全てについてタグ融合遺伝子発現株を作成した.候補遺伝子が多いため,解析は未だ進めているところであるが,少なくとも 3 つのクロマチン再編成因子が配偶核ゲノム DSB の修復後に機能している結果が得られた.また DSB 修復に伴う配偶核でのヒストン修飾変化に注目して解析を進め,ヒストン H3/H4 について 31 修飾の変化を明らかにするとともに,配偶核成熟に関与する修飾変化を突き止めた.
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