本年度は、昨年度までに確立したMZtnrc6/miR-430 GFPセンサー系統に対して、野生型のtnrc6aをコードするmRNAを受精卵に顕微注入することにより、レスキュー実験を行なった。その結果、MZtnrc6変異体で見られていた発生遅延が回復することが確認できた。またGFPの抑制も回復する傾向が確認された。しかしながら、いずれの場合もその効果は部分的であった。このことは、tnrc6aとbには異なる機能がある可能性を示唆している。すなわち、tnrc6ファミリー間での機能分担が予想される。この結果は、本研究開始時の仮説と矛盾しないものである。一方で、MZtnrc6変異体で見られた表現型の一部は、卵形成期におけるtnrc6の欠損によるものである可能性も考えられる。次に、MZtnrc6変異体における遺伝子発現の変動を明らかにするために、受精後6時間の野生型とMZtnrc6変異胚からRNAを抽出し、RNA-seqによる解析を行った。その結果、MZtnrc6変異胚ではmiR-430の標的配列を有する一連のmRNA群が特異的に上昇していることが確認された。このことから、MZtnrc6変異胚ではmiRNAによるmRNA分解活性が全般的に低下していると結論した。本研究計画の基盤的知見を得る目的で実施し、昨年度に査読付き雑誌へ投稿していたmiRNAによるmRNA分解に関わるDcp2とCnot7をゼブラフィッシュ胚で阻害した場合のmRNAプロファイリングの報告については、査読結果をもとに追加実験と加筆修正を行い、Genes to Cells雑誌に受理された。
|