研究課題/領域番号 |
15K18477
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 綾 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (40595112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 減数分裂 / 線虫 / シナプトネマタンパク質 / 交叉 |
研究実績の概要 |
本研究は、タンパク質のリン酸化/脱リン酸化制御を通して、減数分裂前期に染色体が対合し、交叉を形成したあと、正しく分離される分子メカニズムを探求することを目指している。 平成27年度は、当初、減数分裂の必須因子であるPP4フォスファターゼの基質候補として同定した減数分裂特異的因子について、非/擬似リン酸化変異体株を作製し、それら変異株の表現型解析を行った。これより、同定した因子の一つ、シナプトネマタンパク質SYPのリン酸部位変異体では、減数分裂時にAnaphase chromosome bridgeが作られ、染色体分配を妨げられることを明らかにした。また、免疫染色解析より、この染色体分離異常は、Aurora B(AIR-2)キナーゼの局在異常が直接の原因であることも明らかにした。リン酸化型SYPに特異的な抗体作製を作ることに成功し、リン酸型SYPが染色体上の特定領域に局在することを示した。また、このリン酸型SYPの染色体上の分布が、交叉に依存することも示した。平成27年度の研究結果より、動的なリン酸型SYPの分布は、「交叉が染色体のドメインを指定し、正しい染色体分離に至るカスケード」の一端を担うことが明らかになった。 加えて、我々は、もともとSYPタンパク質のリン酸化サイトを12箇所見つけていた。この12箇所のリン酸化の生物学的意義を明らかにするため、それぞれの部分変異を入れて表現型を比較したところ、最も重要な1リン酸化部位を同定することに成功した。この重要な1リン酸化部位は、特定のキナーゼの結合認識サイトであることから、現在はこの候補キナーゼとSYPの相互作用を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、候補として変異株を作製したPP4基質候補因子のうち、特にSYPタンパク質のリン酸化が減数分裂における正しい染色体分配に必須であることがわかったため、SYPリン酸化の機能解析、リン酸化制御メカニズム解明に重点を置いて研究を進めている。SYPに関する変異株の作製、抗体作製は全て成功し、キナーゼの候補も得られたため、本研究はおおもね順調に進展していると考えられる。現在は、1年目で作製したこれらのツールを用いて、SYPリン酸化が含まれる分子カスケードを明らかにしようとしている。もともと、SYPリン酸化は、相同染色体の対合に重要だと予想していたが、sypリン酸化部位変異株の解析より、リン酸化は対合に重要なのではなく、染色体分離の直前におこる染色体構造変化に重要であることがわかった。 当初予定していたHTPタンパク質のリン酸化機能探索については、競合相手があり、かつ競合相手の研究室のほうが研究進捗状況が進んでいることが国際学会において明らかになったため、我々は追求しないことになった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの本研究成果と、先行研究より、我々は、染色体の特定領域におけるSYPリン酸化が、特定のキナーゼをリクルートし、それがシナプトネマ構造の他のタンパク質のリン酸化につながり、染色体分離に必要な染色体の構造変化につながる、という仮説を立てた。本年度は、候補キナーゼの変異体機能解析や、他のシナプトネマタンパク質のリン酸化パターンを解析し、上記の仮説を検証する。
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