減数分裂前期、父由来と母由来の相同染色体同士は、ペアになって対合し、相同組み換えにより交叉を形成して、減数第一分裂で分離される。本研究は、卵母細胞が豊富な線虫をモデル生物を用いて、減数分裂因子のリン酸化修飾によって減数分裂前期の染色体対合、シナプシス、染色対分配が制御されるメカニズムを明らかにすることを目指した。特に平成28年度は、シナプトネマ複合体のcentral elementであるSYP-1のリン酸化制御に注目して研究を進めた。これまでに申請者は、SYP-1のリン酸化が、減数第一分裂における染色体分離に必要なAurora Bキナーゼの局在に重要であり、SYP-1の非リン酸化変異株は、減数第一分裂に不具合がでることを示してきた。これに加えて、平成28年度は、SYP-1のリン酸化が、始めにシナプトネマ複合体の全長で起こったあと、交叉が形成された後は、交叉から近い側のテロメア(染色体の短腕)にかけてのSYP-1のみがリン酸化されることを、リン酸型SYP-1に特異的な抗体の免疫染色を用いて示した。また、このリン酸化が短腕へ制限されるためには、PLK-2キナーゼが必須であることを指した。SYP-1の12箇所のリン酸化部位のうち、一箇所は、PLKキナーゼが結合するPolo結合サイトである。また、野生株では、PLK-2が染色体短腕のシナプトネマ複合体上に局在するのに対して、SYP-1非リン酸型変異株では、PLK-2がシナプトネマ複合体上に存在できないため、リン酸型のSYP-1が、PLK-2のプラットフォームとして機能するというモデルを立てた。加えて、ZygoteneからPachytene期においてSYP-1リン酸化が、相同染色体のシナプシスを促進するということも明らかにした。
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