• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

「非通常型DNA複製」におけるMCMヘリカーゼファミリーの役割分担の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K18482
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

夏目 豊彰  国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任研究員 (10435513)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード非通常型DNA複製 / Mcm2-7 / Mcm8-9 / ゲノム編集 / オーキシン誘導性デグロン
研究実績の概要

遺伝情報を子孫の細胞に正確に伝えるためには、S期にDNAが1回だけ正確に複製されることが重要であり、この機構の破綻は、がんを含む様々な疾患の原因になり得る。一方、様々な生物や細胞種において、この通常のS期複製様式から逸脱した、 生理的または病理的な“非通常型 DNA 複製”が観察される。これは組織の発生分化や細胞のがん化 などと密接な関わりがあるが、制御機構においてはほとんど分かっていない。本研究では、DNA 複製において重要な役割を果たす二つの MCM ヘリカーゼ、Mcm2-7とMcm8-9複合体に着目し、 非通常型複製様式におけるそれぞれの機能解析を行っている。
本年度はまず、通常の複製様式を示すと考えられたヒトHCT116株にて、オーキシン誘導性デグロンを用いてMcm2タンパク質を誘導的に分解する系を構築した。当初の予想に反し、通常のS期においてMcm2を壊しても、Mcm2-7複合体非依存的なDNA合成が観察された。さらに、MCM8-9遺伝子の破壊株を用いた解析から、このDNA合成はMcm8-9複合体に依存していた。この結果は、通常のS期においても、Mcm2-7ヘリカーゼが何らかの原因によって複製フォークから除去されると、Mcm8-9依存的な非通常型DNA複製が起きることを意味する。本結果に関しては、現在論文投稿準備中である。
また、様々な細胞種における非通常型DNA複製の解析も開始した。最初に、組換え依存的テロメア伸長(ALT)を示すU2OS細胞において、Mcm8タンパク質をRNA干渉により枯渇させ、テロメアの長さやクラスタリングに対する影響を調べた。しかし、コントロールと比べて有意な差は見られなかったことより、ALTにはMcm8-9複合体が重要な役割を果たしてないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予想とは違い、通常のS期のDNA複製時においても、Mcm2-7ヘリカーゼを破壊することにより、非通常型DNA複製を誘導することが可能であることに気づいた。これと同様な現象は、抗がん剤等によってがん細胞の複製フォークを破壊した際にも生じていると予想され、この現象をターゲットにした薬剤の開発など、今後のさらなる研究に繋がると考えている。一方、この現象の解析に比較的多くの時間を費やしたため、様々な細胞種におけるエンドレプリケーション等の非通常型DNA複製の解析が少し遅れた。しかし、細胞株の構築法や解析法の確立・改善が進んだため、来年度の解析の準備は十分に整ったと言える。
本年度に得られた結果に関しては、国内外複数の学会で口頭・ポスター発表を行い、今後の研究を推進する上で有意義なフィードバックが得られた。

今後の研究の推進方策

今後は、様々な細胞種における非通常型DNA複製の解析にフォーカスする予定である。様々な細胞種においてMcm2タンパク質を誘導的に分解するためには、オーキシン誘導性デグロンのAIDタグを内在性のMcm2遺伝子に付加する必要があり、これは比較的困難なステップで時間もかかる。しかし、私達は最近、CRISPR/Casを用いて簡便に網羅的にタグ付けを行う方法を開発して論文の報告も行った。今後は、本技術を駆使し、他の細胞種における実験を円滑に進められると考えている。同時に、Mcm8-9複合体の相互作用因子の探索、染色体への呼び込み因子の探索を行う。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Relative contribution of four nucleases, CtIP, Dna2, Exo1 and Mre11, to the initial step of DNA double‐strand break repair by homologous recombination in both the chicken DT40 and human TK6 cell lines2015

    • 著者名/発表者名
      Hoa NN, Akagawa R, Yamasaki T, Hirota K, Sasa K, Natsume T, Kobayashi J, Sakuma T, Yamamoto T, Komatsu K, Kanemaki MT, Pommier Y, Takeda S, Sasanuma H
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 20 ページ: 1059-1076

    • DOI

      10.1111/gtc.12310

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 人為的複製フォーク破壊システムを用いた ヒト細胞におけるフォーク再生機構の解析2016

    • 著者名/発表者名
      夏目豊彰
    • 学会等名
      第33回染色体ワークショップ・第14回核ダイナミクス研究会
    • 発表場所
      松島一の坊、宮城県松島町
    • 年月日
      2016-01-12 – 2016-01-14
  • [学会発表] Artificial destruction of active DNA replication forks reveals the HR-dependent fork recovery involving Mcm8-92015

    • 著者名/発表者名
      夏目豊彰
    • 学会等名
      BMB2015
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド、兵庫県神戸市
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] 人為的複製フォーク破壊システムを用いた ヒト細胞におけるフォーク再生機構の解析2015

    • 著者名/発表者名
      夏目豊彰
    • 学会等名
      第23回DNA複製・組換え・修復ワークショップ研究会
    • 発表場所
      焼津グランドホテル、静岡県焼津市
    • 年月日
      2015-10-19 – 2015-10-21
  • [学会発表] A PCR-based tagging method for generation of human conditional mutants by use of the auxin-inducible degron technology2015

    • 著者名/発表者名
      夏目豊彰
    • 学会等名
      Genome Engineering: The CRISPR/Cas Revolution
    • 発表場所
      Cold Spring Harbor Laboratory, New York, USA
    • 年月日
      2015-09-24 – 2015-09-27
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi