研究課題/領域番号 |
15K18485
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 敬子 京都大学, エネルギー理工学研究所, 研究員 (00707474)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | NMR / TLS/FUS / タンパク質-核酸相互作用 |
研究実績の概要 |
Translocated in liposarcomaタンパク質 (以下TLS)は非コード核酸との結合を介してCyclin D1遺伝子 (以下CCND1)の転写抑制やテロメア長の短縮に関与している。本研究課題ではこれらの制御に関わるTLSと非コード核酸間の結合について構造研究を進める。 CCND1の転写抑制においては、CCND1の上流から転写される非コードRNAがTLSに結合する。まずNMR法により非コードRNAのTLS結合領域の二次構造を決定した。さらに、TLSのC端に位置するRGG3ドメインに対して非コードRNAを添加し、RGG3がRNAの一本鎖領域に結合することを示した。より詳細な相互作用部位の同定に向けて、安定同位体標識を施したRGG3ドメインを調製し、解析を進めている。 テロメア長の制御においては、TLSはテロメアDNA、およびテロメアDNAから転写されるRNAであるTERRAが形成する四重鎖に結合して三者複合体を形成する。TLSのRGG3に対して、テロメアDNAあるいはTERRAを添加した二者複合体、およびテロメアDNAとTERRAの両者を添加した三者複合体を調製し、NMR法によって相互作用部位の同定を行った。しかし、高分子量の複合体では一部のNMRスペクトルが不明瞭であった。そこで、RGG3のC端領域を用いた複合体を調製し、NMRスペクトルを改善することができた。解析の結果、テロメアDNAとの二者複合体ではフェニルアラニンがテロメアDNAを認識し、チロシンが結合を補強する役割を担うことが示唆された。逆にTERRAとの二者複合体では、チロシンがTERRAを認識し、フェニルアラニンが結合を補強することが示唆された。一方で、三者複合体ではフェニルアラニンとチロシンがそれぞれテロメアDNAとTERRAに優先的に結合することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CCND1の転写制御に関わる非コードRNAとTLSとの結合に関しては、TLSの安定同位体を調製し、順調に解析を進めている。テロメア長制御の解析に関しては、複合体が高分子量であることに起因して、スペクトルが一部明瞭でなかったため、断片化したRGG3を使用しての解析を追加した。そのため計画に一部変更が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
RGG3ドメインと非コードRNAの複合体について、安定同位体標識体を使用して構造解析を進める。また、テロメアDNA、TERRAとRGG3の複合体についても、二者複合体および三者複合体における各残基間の相互作用様式をNMR法によって解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画を一部変更してRGG3を断片化したコンストラクトの調製する必要が生じた。その実験に時間を要したため、RGG3およびその断片に核酸を加えての解析の回数が少なくなり、予定よりも核酸の購入金額が少額となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
RGG3およびその断片を使用し、核酸との複合体を調製して構造解析を行う。そのため、安定同位体標識化タンパク質の発現・精製に用いる試薬類の購入や核酸の合成費用としての使用を予定している。
|