研究課題
金属蛋白質の真の酸化型構造を知ることは、長い間、不可能とされてきた。構造解明に必要なX線照射にともなう放射線損傷により、金属中心がきわめて迅速に還元され、構造変化を誘起してしまうためである。しかし近年、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いた新しい解析手法、連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)の登場によって、常温状態かつ放射線損傷の無い状態(常温無損傷構造)の解明が可能になりつつある。10フェムト秒以下のXFELの極短パルス光を用いると、放射線損傷で構造変化が誘起されるよりも早く、構造情報を記録して観察することができるためである。平成27年度は、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを利用して、銅含有亜硝酸還元酵素の完全酸化型の立体構造を、銅原子の異常散乱効果を用いて世界で初めて決定し、本酵素のプロトン共役電子移動の反応機構を解明することに成功した。これまで、金属蛋白質の真の酸化型構造を知ることは、長い間、不可能とされてきたが、本研究では、SACLAとSPring-8の技術を融合することで、新しい酵素反応機構を明らかにした。一方、ミオグロビンおよび改変ミオグロビンのSFXデータの収集も行った。
1: 当初の計画以上に進展している
平成27年度に研究論文を2報国際誌に報告することができた(J. Biochem. 2016; PNAS 2016)。これは当初の計画を大きく超える進捗である。
ミオグロビンのSFXデータの解析を進める。また、亜硝酸還元酵素の時分割SFXに向けた検討を進める。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
PNAS
巻: 未定 ページ: 未定
10.1073/pnas.1517770113
J. Biochemistry
10.1093/jb/mvv133
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2016/20160301_1