研究実績の概要 |
金属蛋白質の真の酸化型構造を知ることは、長い間、不可能とされてきた。構造解明に必要なX線照射にともなう放射線損傷により、金属中心がきわめて迅速に還元され、構造変化を誘起してしまうためである。しかし近年、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いた新しい解析手法、連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)の登場によって、常温状態かつ放射線損傷の無い状態(常温無損傷構造)の解明が可能になりつつある。10フェムト秒以下のXFELの極短パルス光を用いると、放射線損傷で構造変化が誘起されるよりも早く、構造情報を記録して観察することができるためである。 平成28年度は、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを利用して、銅含有亜硝酸還元酵素の時分割SFXに向けた条件検討を進めた。また、ミオグロビンおよび改変ミオグロビンのSFX構造の精密化を行った。 また、光感受性原子であるヨウ素を含む界面活性剤を合成し、SFXでタンパク質構造の位相を決定する手法の開発を行い学術論文に報告した(Nakane et al & Mizohata, PNAS, 2016)。この結果を昨年度報告した亜硝酸還元酵素の位相決定データと比較し、SFXによる位相決定法の最適化に関する検討を行った。
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