研究課題
TFII-Iは申請者により新たに同定された損傷乗越えDNA合成(TLS)に必須のタンパク質であり、DNAの損傷部位で停止した複製因子PCNAに損傷乗越え型ポリメラーゼ(Pol zeta)をリクルートする機能を持つ。遺伝子疾患やがん化の分子基盤を解明するために、TFII-Iを中心とした新規の分子間相互作用のメカニズムを原子レベルで解明することが求められている。本研究では新規TLS因子であるTFII-Iに着目し、PCNAやPol zetaと形成する高次複合体の立体構造と相互作用をX線結晶構造解析により明らかにし、創薬の構造基盤を得ることを目的とした。H28年度はTFII-IのN末端ドメイン、TFII-I-PCNA複合体、TFII-I-Pol zeta複合体の調製、結晶化、X線回折実験を行った。TFII-IのN末端ドメインはX線回折実験の結果、タンパク質特有の回折点が得られたが構造解析を行うには不十分であり、今後さらなる結晶の最適化が必要である。TFII-I-PCNA複合体に関しては、3.0オングストローム分解能の回折データ収集に成功し、PCNAをサーチモデルとした分子置換法により位相決定を行ったところ、TFII-Iの明瞭な電子密度が得られなかった。TFII-I-Pol zetaに関しては、4.4オングストローム分解能の回折データを収集し、REV7-REV3複合体をサーチモデルとした分子置換法により位相決定を行ったが、上記と同様にTFII-Iの明瞭な電子密度が得られなかった。原因として、TFII-IとPCNA、もしくはREV7-REV3複合体の結合定数が低いことや、結晶内のパッキングの影響などが考えられた。これらの問題を解決するために、異なる生物種で溶液中での会合状態の異なるPCNAを用いたキメラ複合体の結晶を作成し、現在、X線結晶構造解析を進めている。
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