研究課題
インフルエンザウイルスが宿主細胞に効率よく感染し、増殖するためには、宿主細胞内の様々な機構を利用する。インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼとNPは、細胞内で様々な宿主因子と相互作用し、複合体を形成することで、ウイルスゲノムの複製と転写が可能となる。これら宿主因子の中でimportinファミリーは、細胞質で合成されたウイルスタンパク質の核移行に必須の宿主因子であり、NPはimportinαと結合することで核に移行する。本研究では構造生物学的手法を用いて、インフルエンザウイルスのNPがimportinαと結合し、どのように核移行するかを明らかにするために、タンパク質の大量調製および相互作用解析、結晶化条件の検討作業を行った。NPとimportinα複合体のX線結晶構造解析に向けて、大腸菌発現系を用いてタンパク質の大量調製を行った。さらに、超遠心分析によってNPとimportinαが1:1のモル比で結合することを確認した。ゲルろ過クロマトグラフィーで複合体試料を調製し、結晶化スクリーニングを行ったが結晶は得られなかった。そこで、2次元電気泳動や動的光散乱法による結晶化試料の性状分析を行ったところ、NPについて電荷の異なる成分が多数混在していることがわかった。この結果から、結晶化に向けてさらなる試料調製方法の検討が必要であると判断された。
3: やや遅れている
NPとimportinαの複合体試料の調製に成功したものの、構造解析を行うための複合体結晶を得るには至っていない。今後、さらなる調製方法の検討が必要であると考えられる。これらをふまえると、本研究の現在までの達成度は(2)が妥当であると考えられる
今後、NPとimportinαの複合体試料の結晶化に向けて、試料調製方法を検討していく予定である。具体的には、イオン交換クロマトグラフィーを用いて均一な成分のみに精製することや、発現させるタンパク質の長さを変更することで複合体試料の結晶化を促していく考えである。
すべて 2015
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Genes & Development
巻: 29 ページ: 1649-60
10.1101/gad.267104.115