研究課題
小胞体の構造異常タンパク質は特異的に認識され、ERAD(Endoplasmic Reticulum-Associated Degradation)によって分解・除去される。近年、ERADは異常タンパク質を無毒化する品質管理としての役割だけでなく、天然タンパク質の活性制御にも寄与することが示されつつある。しかしERADによって分解される天然の基質は少数しか同定されていない。ERADには未知の基質を介した未知の生理的役割があると考えられる。そこで本研究では、ERADの天然の基質を網羅的に同定して、「分解装置による認識機構」と「分解の生理的意義」の解明を目指している。平成27年度は、実施計画に記した3つのタンパク質について特異的抗体を取得して、細胞内における分解を調べた。その結果、小胞体から形成されると考えられている脂質滴に局在するタンパク質は、C末端にエピトープタグを付加すると小胞体にmislocalizeしてERADによって分解されることを見出した。しかしエピトープタグを付加していない内在性基質の場合、脂質滴に正しく輸送されが、この場合もユビキチン・プロテアソーム系によって分解されることを見出した。現在既にE3リガーゼの有力な候補を得ている。
2: おおむね順調に進展している
ERADに関わるE3リガーゼHrd1およびDoa10について天然の基質を見つけるがもっとも理想的だが、小胞体または小胞体から形成される脂質滴に局在するタンパク質について、他のE3リガーゼに依存して分解される基質の発見および分解の生理的意義の解明も同等に重要だと考えている。
平成27年度に見出した脂質滴に局在するタンパク質の分解について、関連するE3リガーゼを完全に決定して、認識と分解の意義について、生化学的、遺伝学的、細胞生物学的解析を進める。ウサギポリクローナル抗体は既に取得しており、必要に応じて精製して使用する予定である。
ポリクローナル抗体の作製と消耗品の購入に大部分をあてているが、個々の基質の解析を先に進め、抗体の作製を後回しにしたため。
今年度出来る限り抗体を作製して、分解基質の検索を進めると同時に、27年度から引き続いて個々の解析も進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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