研究課題
小胞体の構造異常タンパク質は特異的に認識され、ERAD(Endoplasmic Reticulum-Associated Degradation)によって分解・除去される。近年、ERADは異常タンパク質を除去する品質管理としての役割だけでなく、天然タンパク質の活性および量の制御にも寄与することが示されつつある。しかしERADによって分解される天然の基質は少数しか同定されていない。そこで本研究ではERADの天然の基質を網羅的に検索・同定して、「分解の生理的意義」を明らかにすることで、品質管理にとどまらないERADの生理機能の解明を目指した。研究期間中、細胞周期関連因子(ここではCdc99とする)の解析が進んだ。Cdc99は必須遺伝子であり、欠損させると酵母は致死となる。内在性のCdc99に3xHAタグを融合させた酵母株を作製したところ、野生株と同様の増殖を示したことから、Cdc99-3HAは機能的であることが分かった。Cdc99-3HAはプロテアソームに依存して分解される短寿命タンパク質であり、その分解はERADに関わるE3酵素Hrd1、Doa10、E2酵素Ubc6・Ubc7などに依存することが分かった。しかし内在性のCdc99を認識するポリクローナル抗体を作製して、タグなしのCdc99について同様の実験を行うと、分解されるものの、ERADの変異株においても分解の強い抑制がみられなかった。ERADの変異株において内在性のCdc99の発現量は上昇していることが分かった。これが分解の抑制によるものか転写の上昇によるものかは今後の検討課題である。本研究ではまた、ERADと金属イオン輸送体の新しい遺伝学的相互作用を発見することができた。この相互作用はCdc99を介したものと考えられるが、Cdc99のノックダウン株などを作製して今後検討する予定である。
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