研究課題/領域番号 |
15K18504
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川上 広宣 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50403952)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 染色体複製 / ORC / 機能構造解析 / DNA結合 / 制御因子 |
研究実績の概要 |
本年は、出芽酵母の複製起点と特異的に結合するORCヘテロ6量体に着目し、まず体系的機能構造解析に適したORC簡便精製法を発表した(Front. Microbiol. 2016)。次に、独自に見出していた、複製起点との結合能を特異的に欠損するORC変異を子細に追究した。同定したアミノ酸残基は最大サブユニットOrc1上の塩基性パッチ領域に位置し、このパッチは従来DNA結合ドメインと予想されていたモチーフと異なる。まず我々はこのパッチが細胞内におけるOrc1と代表的な複製起点との結合に必須なことを見出した。このパッチを含む部分ペプチドは試験管内において低親和性ながらも単独で複製起点を認識し、機能性残基の変異によって結合特異性が低下すると判明した。即ち、ORCが複製起点と結合する際は、Orc1塩基性パッチを介した複製起点の走査探索過程の後、他のドメイン・サブユニットと協調した高親和性結合に転ずると示唆される。情報解析から真核生物に特有の共通原理が示唆されたため、我々はこの塩基性パッチをeukaryotic origin sensor (EOS)と命名した(Sci. Rep. 2015)。 また我々は細胞内においてEOSを必要としないORC結合領域の同定にも成功しており、細胞内におけるORC機能構造の高度な使い分けが予想された。更に、ORC制御因子の探索を遺伝学・生化学的に進め、想定外のパスウェイに関わる因子を同定しており、その作用機序を解析中である。この他、ORCサブユニットならびにパラログCdc6の機能構造解析を更に高速化するシステムを確立し、このシステムを利用して解析対象を他のDNA結合モチーフにも拡げた。その結果、実際に細胞増殖に必須な領域をいくつか特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ORCならびにCdc6の情報解析・種々のDNA結合モチーフのin vivo解析・ORC制御因子の探索ならびに機能解析を所期の計画通りに行った。変異型蛋白質の精製が遅れているが、これは機能構造解析を更に高速化するシステムの確立を行ったためで、中期的には計画の完遂がより早まると想定している。 更に、申請者が独自に開発した解析システムをフル活用し、ORCと複製起点との結合に関する真核生物間に保存された分子機構を、初めて実験的に提唱することができた。この知見は情報解析等から15年以上信じられてきた予想に異議を唱えるものであり、複製開始機構を論ずる上でのターニングポイントとなることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
ORC制御因子の機能を解明するとともに、変異型蛋白質の精製・性状解析を進めることで、当初の目的達成を目指す。ORC機能構造の複雑性と新たな制御機構の実験的証拠を明瞭に得ることがゴールである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画にあった変異ORCの精製に先だって、ORCサブユニット機能構造解析を更に高速化するシステムを確立した。そこで、変異ORC多量生産株の構築と変異ORC精製に関わる費用として予定していた167,620円を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費は変異ORC多量生産株の構築と変異ORC精製を加速する経費として使用する。
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