研究課題/領域番号 |
15K18505
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
田村 直輝 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70745992)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / 浸透圧ストレス / イノシトールリン脂質 |
研究実績の概要 |
平成27年度の当初の研究計画目標は、イノシトールリン脂質の一つであるPI(3,5)P2に結合するWIPI family分子群の局在解析(1)とWIPI familyに対する有用な抗体の探索(2)を予定していた。以下、各項目に分けて当該年度の業績を報告する。尚、2015年度に得られた業績を2016年6月に開催される日本細胞生物学会にて報告する予定である。 (1)WIPI familyタンパク質の局在解析 我々は既に、マウス胎児由来線維芽細胞(MEF)において過剰発現したGFP-WIPI-1とGFP-WIPI-2が高浸透圧下において特徴的なドットの局在を示すことを見出していた。今回、レンチウイルスベクターであるpLVSINにGFP-WIPI-1をクローニングし、MEFのゲノムに挿入する形で安定発現株の作製に成功した。この細胞を用いてライブセルイメージングを行ったところ、GFP-WIPI-1は高浸透圧ストレス誘導の数十秒後でドットを形成していた。この局在変化は、同じくWIPI-1がドットを形成するアミノ酸飢餓条件下とは大きく異なっていた。これらの局在は抗体を使った免疫染色法でも確認されたことから、内在性の分子でも見られる局在であった。各オルガネラマーカーと比較したところ、高浸透圧下で見られるWIPI-1 familyのドットはオートファジー分子と共局在することが分かった。さらに、この局在変化はMEFだけでなく、複数のヒト培養細胞で見られたことから細胞間で保存性の高い現象であることが示唆された。 (2)WIPI familyに対する抗体の探索 WIPI-1に関しては、培養細胞と組織切片の両方で解析できる2種類の抗体を取得した。一つは市販の抗体、もう一つは自作の抗体であり、両者のWIPI-1の認識部位は異なる場所であった。WIPI-2に関しては、培養細胞で解析できる市販の抗体を確保した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、概ね当初の研究計画の通り進んでいる。以下に、培養細胞解析の計画(1)と組織・個体の解析(2)とに分けて記述する。 (1)培養細胞の解析 培養細胞の解析は順調に進んでおり、高浸透圧下で見られるWIPI family の局在変化はMEFだけに限らず様々な培養細胞で保存されている現象であることが分かったので、他の培養細胞も含めて解析を進めている。高浸透圧下のWIPI-1およびWIPI-2のドット局在はPI(3)Pの合成阻害剤であるWortmanninの添加によって消失することからPI(3)PもしくはPI(3,5)P2依存的なものである可能性が高い。一方で、アミノ酸飢餓によって誘導される一般的なオートファジーに必要なFIP200が必要なかったことから、飢餓誘導のオートファジーとは全く異なった上流シグナルの支配下にあると考えられる。この上流シグナルを探索することが次年度以降の大きな課題となる。また、我々の研究室の強みである電子顕微鏡の解析に供することでより詳細な形態学的なデータを得られることが期待される。 (2)個体・組織の解析 WIPI familyに属する4つの分子のなかでWIPI-1に対してのみではあるが、組織解析に適した抗体を2種類、取得することができた。これら2つの抗体の認識部位が異なることから信頼性の高いデータが期待できる。実際に、両抗体で共に染色される組織もいくつか確認されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の予定通りに培養細胞の解析(1)と組織・個体の解析(2)に分けて並行して進めていく。以下に、それぞれの今後の研究展開を記す。 (1)培養細胞の解析 培養細胞では高浸透圧下でどのような細胞内の膜構造の変化がもたらされているかを電子顕微鏡で解析する。またFIP200を含んだUlk1複合体以外の上流シグナルの探索を行う。また、WIPI familyをノックダウンもしくはノックアウトした細胞が高浸透圧下でどのような表現型を示すかを解明する。 (2)組織・個体の解析 取得した2種類のWIPI-1抗体を用いてマウスの組織学的な解析を行う。最初は、通常の飼育を行ったマウスの組織を使用して発現量の高い部位を調査する。次に、マンニトールなどの高浸透圧調整剤をマウスに投与して発現量が高かった部位の局在変化を追跡する予定である。また一方で、WIPI-1以外のWIPI family(WIPI-2~WIPI-4)に対する抗体の探索も引き続き実施する予定である。
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