平成29年度は、高浸透圧下で引き起こされるオートファジー経路の詳細な解析(1)とWIPI-1の組織的学的な解析(2)を行った。以下、それぞれの項目に分けて当該年度の業績を報告する。尚、2017年度に得られた業績は第123回日本解剖学会総会で報告を行った。 (1)高浸透圧ストレス誘導性オートファジーの解析 上流シグナルの解析を詳細に行った。一般的なオートファジー誘導条件下ではUlk1は脱リン酸化により活性化することで下流因子を刺激する。一方で、高浸透圧ストレス誘導性のオートファジーではUlk1の脱リン酸化が見られなかった。また、ATG13欠損細胞を東京大学医学部水島昇研究室より頂き解析に供したところ、高浸透圧ストレス誘導性オートファジーには不要であることが分かった。Ulk1、Atg13ならびにFIP200は複合体(Ulk1複合体)を形成することでオートファジーの上流因子として働いている。従って、高浸透圧ストレス誘導性オートファジーには、通常のオートファジーとは異なってUlk1複合体が必須ではないことが分かった。以上のデータをまとめた論文を現在、投稿準備中である。 (2)WIPI familyに対する抗体の探索 前年度に組織レベルで使用できるWIPI-1の抗体を取得出来たので、WIPI-1欠損マウスを用いてWIPI-1の組織学的な解析を行った。WIPI-1欠損マウスは中国北京市Institute of Biophysics Chinese Academy of Sciencesに所属するHong Zhang博士より組織切片を提供して頂いた。免疫染色法により野生型でWIPI-1のシグナルが検出された組織(膀胱、腎臓など)をWIPI-1抗体で染色したところ、WIPI-1欠損マウスでも野生型と同様のシグナルが検出された。現在、他の臓器を解析中である。
|