研究課題
ミトコンドリアは融合と分裂を含む形態変化を頻繁に繰り返しており(ミトコンドリアダイナミクス)、これが細胞機能制御に重要な機能を持つことが近年注目を集めている。しかしその形態変化がどのように核へ伝わり細胞機能を制御しているのかについてはほとんど明らかになっていない。申請者は、その細胞の機能制御に重要なメカニズムの解析にミトコンドリア近傍に局在するRNA顆粒に着目して進めている。本年度においては、ミトコンドリア関連因子のノックアウト細胞の作製とその表現系を詳細に解析することを中心にプロジェクトを遂行した。また、本研究の対象となりうるミトコンドリアダイナミクスが関連する細胞機能(悪性形質)とその制御因子の解析が可能なシステムを作製した。このようなミトコンドリアダイナミクスとその関連因子を探索するプロジェクトは非常に少なく、この成果は本研究課題だけでなく、当該の研究領域に大きく貢献できる結果が期待される。
2: おおむね順調に進展している
個体におけるミトコンドリアとオルガネラのコミュニケーションの解析については、連携研究者と緊密なディスカッションを進めており、今後は研究目的の達成に向けてプロジェクトを推進していく予定である。細胞レベルの解析では、ミトコンドリア形態変化による細胞機能(悪性形質)とその制御因子の探索の為にsiRNAスクリーニングを行ったところ、これまでには報告のない新たなシグナル経路との関連が示唆された。この経路との関連解析を進めた結果、全体の計画に少し遅延を生じた。しかし、今回関連が示唆されたシグナル経路を標的とした抗がん剤へのアプローチは海外で進められており、本研究課題の一部として取り込むことで、よりよい成果につながることが見込まれる。
研究計画に従い、個体レベルの解析と細胞レベルの解析を両面から進め、得られた結果を互いにフィードバックすることでより研究を推進する。これまでに得られた結果を含めて本研究期間の成果として取りまとめ、国内外の学会、学術誌への投稿という形で発表する。
本申請研究では個体と細胞レベルでの研究を計画しており、それに準じた経費を計上している。今年度では、細胞レベルの解析に大きな進捗が見られたため、動物実験に関わる経費の使用がやや少なかった。また、細胞レベルの解析には申請者が所属する施設が所有する機器をもちいた解析が中心であり、支出が当初の計画より少なかったことが理由である。
実験動物を用いた解析も並行して進めていることから、次年度に本年度の研究計画分の実験を進めることを計画しており、研究費はこれに沿った形で支出する。また、成果について積極的にとりまとめ、さらに多くの国内外の学会や学術誌への投稿が見込まれるのでその経費として使用する予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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