研究課題/領域番号 |
15K18509
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
芳賀 淑美 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 研究員 (40525789)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 質量分析 / GLUT4 |
研究実績の概要 |
インスリン応答性グルコース輸送体GLUT4は、血中グルコース濃度の恒常性維持に重要な役割を果たしている。インスリンはGLUT4の局在を細胞内の貯蔵小胞から細胞膜上に変化させることによって、血中グルコースの筋肉や脂肪組織への取り込みを増加させ、グルコースホメオスタシスを制御している。しかし、インスリン刺激の有無に応じたGLUT4の適切なソーティング制御機構の全貌は未だ明らかとなっていない。本研究課題の目的は、GLUT4の細胞内輸送制御に関わる糖鎖の役割と、選別輸送メカニズムを明らかにすることである。平成27年度は、インスリン応答性細胞であるHeLa細胞に野生型GLUT4を発現させ、解析を行った。糖鎖プロセシング酵素阻害剤処理により糖鎖構造を変化させたGLUT4はインスリン応答性を失ったことから、N型糖鎖の特定の構造がGLUT4の選別輸送に関わっている可能性が示唆された。また、GLUT4上のN型糖鎖の構造プロファイルを質量分析によって解析し、糖ペプチド全体の精密質量から糖鎖構造を推定した。GLUT4にはN型糖鎖が1ヶ所しか結合しないにも関わらず、ウエスタンブロッティングの結果ではPNGase FでN型糖鎖を脱離した場合と比較して、相対的な分子量が大きく違うことから、非常に大きな構造の特殊な糖鎖が結合していることが予測されていた。今回の質量分析の結果から、実際に複雑な種類のN型糖鎖が付加していることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖鎖修飾はGLUT4研究においてこれまで全く焦点が当てられることがなかったが、選別輸送に重要であることを明らかにすることができた。一方、ゲル内消化、HAタグを導入した新しいコンストラクトの構築と解析など様々な方法を試したものの、質量分析で糖鎖構造を確定させるには至らなかったため、当初予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖構造を確定させるに至らなかった理由として、GLUT4が12回膜貫通型タンパク質であることから疎水性が非常に高く、界面活性剤を使わない方法では限界があるためであると考えられた。そのため、質量分析に使用可能な界面活性剤の検討や、疎水性を下げるために予めペプチドにしてから免疫沈降を行うなど、糖ペプチドの回収率を上げる工夫をする。糖鎖構造の確定次第、選別輸送に関わる糖鎖認識分子の同定に向けた解析を行う。
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