研究課題
細胞質ダイニンは、ATPのエネルギーを利用して微小管上を運動するモータータンパク質である。この運動は、細胞分裂・細胞内小器官の位置決定・ウィルスから核に至る種々の小胞の細胞内輸送といった多様な生命現象に深く関与している。ダイニンは1つの重鎖の中に、4箇所のATP結合部位を持つユニークな構造を取っており、これら4箇所でのATP結合がいかにダイニンの運動を制御しているのか、という問題は未だ不明な点が多い。これまで、研究の進展してこなかった大きな要因として、運動中にダイニンと結合しているATPの数や結合のタイミングを実測できていなかったことが挙げられる。我々はこの問題点を、次世代シーケンサーに採用されている1分子イメージング法のZero-mode waveguide 法(ZMW 法)を用いて解決できた。ZMW 法は直径100 nm ほどの微小穴に局所励起光を照射するため、μMオーダーの蛍光分子が存在しても背景光が劇的に低減した状態で分子の結合・解離を精度よく、しかもミリ秒以下の時間分解能で実測できるものである。このシステムを用いて計測したところ、1分子のダイニンに複数のATP分子がほぼ同時に結合及び解離する現象が観察され、ATP結合部位の間で協同性があることが示唆された。そこで平成28年度には、このATP結合部位間での協同性についてさらに計測を進めた。すると、高濃度ATP条件下だけでなく非常に低濃度のATP条件下においても、協同的なATP結合が見られ、ダイニンのATP結合部位間では緊密なATP結合・加水分解サイクルの調整が行われていることを支持する結果を得た。今後はさらに解析を進め、各ATP結合部位の役割を解明し、雑誌論文等で発表したいと考えている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
bioRxiv
巻: 122069 ページ: 1-36
doi: http://dx.doi.org/10.1101/122069