研究実績の概要 |
電位依存性プロトンチャネルHv1/VSOPは単量体でイオン透過路とチャネルの開閉を制御する機構を持つにもかかわらず、2量体を形成し、サブユニット間で協調してチャネルの開閉を制御している。本研究では、再構成系による単一チャネル電流計測および蛍光変化計測を用い“電位依存性プロトンチャネルのサブユニット間の協調メカニズム“を解明する。 本年度は、Hv1/VSOPにラベルした蛍光プローブの膜電位依存的な蛍光変化を検出する試みを行った。 (1) マクロな蛍光変化計測の確立:蛍光標識の導入部位を最適化するために、アフリカツメガエル卵母細胞を用いてマクロな蛍光変化を測定できる系を立ち上げ、計測した。具体的には2量体界面を形成するS3,S4ヘリックスをつなぐ細胞外側リンカーのSer188にCysを導入、代表的な蛍光物質であるCy3, Cy5マレイミド体にてラベルを行った。その結果膜電位依存的な蛍光変化が観測され、かつCy3, Cy5を同時にラベルすることで時定数の異なるFRET変化が観測された。これは各サブユニットにおいて別々の蛍光物質が導入されていることを表している。また、膜電位依存的な構造変化が1段階ではなく数段階あることを示唆し、FRET効率が上昇する方向に変化することから、膜貫通ヘリックスが2量体界面方向に開く動きを反映していると見られる。 (2) 全反射照明蛍光顕微鏡(TIRF)計測条件の確立:上記マクロ系にて蛍光変化が観測されたので、さらに詳細な解析をすべくTIRFでの実験条件の確立を試みた。当研究室の保有しているTIRFには電気生理学の装備がなかったので、装置の立ち上げから行い、現在では培養細胞などを用いて膜電位コントロール下でTIRF観測を行うことが可能となった。過剰発現させた系においては膜電位依存的な蛍光変化を観測できたため、1分子での計測条件の確立を試みている。
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