研究課題
申請者が発見した高度好熱菌由来の光受容膜タンパク質・サーモフィリックロドプシン(TR)について,高い熱安定性を生み出す構造的要因を明らかにすること,さまざまな物理的・化学的刺激に対する構造安定性を定量的に評価することを目的に,本研究を実施している。本研究で得られた知見をもとに,他の膜タンパク質への適用も可能な構造安定化法の確立や,TRの高い安定性を利用した計測や材料応用への展開を目指している。平成27年度には,TRの高い熱安定性を生み出す構造的要因の探索に取り組んだ。申請者らは,X線結晶構造解析法をもちいてTRの立体構造を明らかにした(Tsukamoto et al.(2016) J. Biol. Chem.)。得られた立体構造をもとに,類縁のロドプシン類との配列比較および分子動力学シミュレーションをおこない,TRの高い熱安定性に寄与する構造領域を推定した。推定した領域を削除した変異体タンパク質を調製し,熱安定性を評価したところ,野生型に比べて安定性が20倍以上低下することを実験で示すことができた。今後は,推定した構造領域が本当に熱安定性に寄与するのかを立証するために,他の類縁ロドプシン類にこの構造領域を挿入し,同様の熱安定性評価をおこなうことが求められる。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究実施計画では,TRの立体構造に基づく構造安定化部位の探索,および異種TR間での熱安定性の評価をおこない,TRの熱安定性を生み出す構造的要因を推定することができた。加えて,平成28年度の研究実施計画で予定している,さまざまな物理的・化学的刺激に対するTRの構造安定性の評価を前倒して実施することができている状況である。
平成27年度の研究実施計画で得られた成果をもとに,今後は推定した構造領域が本当に熱安定性に寄与するのかを立証するために,他の類縁ロドプシン類にこの構造領域を挿入し,熱安定性評価をおこなうことが求められる。平成28年度の研究実施計画では,熱以外のさまざまな物理的刺激(温度変化,光)および化学的刺激(pH,界面活性剤,変性剤,溶媒極性)に対するTRの構造安定性の評価をおこなう。
該当なし
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