• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

全原子構造探索によるリガンド結合過程の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K18520
研究機関横浜市立大学

研究代表者

森次 圭  横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任准教授 (80599506)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードリガンド結合 / グルタミン結合タンパク質 / 分子動力学シミュレーション / MSES法 / 全原子構造探索
研究実績の概要

Multi-scale Enhanced Sampling (MSES)法は、全原子モデルと低自由度の疎視化モデルを連成させたマルチスケール手法により、全原子の解像度で効率的に構造空間探索を実行することができる。今年度の研究ではリガンド結合過程の物理化学的理解を目指し、リガンド結合タンパク質のモデルとして実験・理論で用いられているグルタミン結合タンパク質(GlnBP)に対してMSES法を適用し全原子構造探索を行った。粗視化力場をタンパク質・リガンド間相互作用とタンパク質構造変化の両方の過程がうまくシミュレートできるように構築し、16個のレプリカを用いたハミルトニアンレプリカ交換MSESを計250 nsにわたり実行した。
得られた全原子トラジェクトリについてまずGlnBPの結合構造からのRMSDとGlnBP/グルタミン間のnativeな原子コンタクトの割合を計算した結果、タンパク質構造・リガンド相互作用の両方に対して従来のbrute-force MDに比べて広範なサンプリングが実現されることがわかった。2次元の自由エネルギー地形を見ると、概してリガンド結合構造を中心としたdownhillなランドスケープであることが示された。さらに、得られた構造アンサンブルについてタンパク質構造・リガンド相互作用を軸として構造クラスタリングを実行した結果、6つの構造クラスタ間の遷移が、リガンドが先に結合してからGlnBPの構造が閉じるといったリガンド結合過程のパスウェイに沿って起こること、また、GlnBPの構造が閉じつつもリガンド相互作用が正しくないdead-endな状態が存在することを見出した。さらに、リガンド結合構造に到達する前にrate-limitingな状態変化があり、その間に脱水和しつつリガンドとの原子間相互作用が完成することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究計画にあるグルタミン結合タンパク質のシミュレーションと解析を完遂しており、結果を論文にまとめているところである。また、来年度の研究であるイオンチャネル共役型グルタミン酸受容体に対してもテスト計算を進めており、来年度にはプロダクトランを速やかに実行する予定である。

今後の研究の推進方策

イオンチャネル共役型グルタミン酸受容体リガンド結合ドメイン(iGluR)にMSES法を適用し、iGluR構造変化と共役したグルタミン酸の結合過程を理解する。タンパク質構造変化とリガンド相互作用の共役関係をiGluRの結合構造からのRMSDとグルタミン酸との原子コンタクト数に沿った2次元自由エネルギー面から探り、グルタミン酸が遷移・中間的な結合を経て結合する経路を網羅的に探索、その経路に沿って起こるイベント(iGluR構造変化、cleft構造の開閉、グルタミン酸とタンパク質側鎖間の原子相互作用、水和構造の変化)を追うことにより、iGluRのグルタミン酸結合過程の詳細を原子解像度で解析する。

次年度使用額が生じた理由

計算データバックアップ用途のストレージサーバを今年度に購入しなかったため。

次年度使用額の使用計画

40テラバイト程度のストレージサーバを購入する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Coupled Nose-Hoover equations of motion to implement a fluctuating heat-bath temperature2016

    • 著者名/発表者名
      Ikuo Fukuda and Kei Moritsugu
    • 雑誌名

      Physics Reviews E

      巻: 93 ページ: 033306

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevE.93.033306

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Motion Tree delineates hierarchical structure of protein dynamics observed in molecular dynamics simulation2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Moritsugu, Ryotaro Koike, Kouki Yamada, Hiroaki Kato and Akinori Kidera
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 10 ページ: e0131583

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0131583

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] MSES シミュレーションとその応用2015

    • 著者名/発表者名
      森次 圭
    • 学会等名
      計算統計物理学研究会第6回研究会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2015-11-21 – 2015-11-22
    • 招待講演
  • [学会発表] Energy landscape of protein-ligand interaction revealed by multiscale enhanced sampling2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Moritsugu
    • 学会等名
      Rare Event Sampling and Related Topics III
    • 発表場所
      統計数理研究所
    • 年月日
      2015-11-12 – 2015-11-13
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Energy Landscape of Protein-protein and Protein-ligand Interactions Revealed by Multiscale Enhanced Sampling2015

    • 著者名/発表者名
      Kei Moritsugu
    • 学会等名
      The 4th IGER International Symposium on Science of Molecular Assembly and Biomolecular Systems
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2015-08-31 – 2015-09-02
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi