研究実績の概要 |
平成29年度は、研究途中から研究対象として加えた黄色ブドウ球菌ファージS13’の構造解析が蛋白質研究所の最先端電子顕微鏡を用いることで非常に順調に進みだしたこともあり、その構造解析を精力的におこなった。S13’ファージの頭部の構造に関しては、3.1オングストローム分解能で構造を決定し、その構造に基づいて原子モデルの構築ができた。尾部に関しては、約10,000枚の写真を撮影することによって、尾部の主要な部分に関しては4.0オングストロームを超える分解能での構造を決定することができ、現在原子モデルの構築に取り組んでいる。また、様々な構造解析の技術を駆使することによって、ファージの尾部全体の構造決定が可能となりつつある。また、蛋白質研究所の最先端クライオ電子顕微鏡FEI Titan Kriosの電子直接検出型カメラがFalcon 2から最新の電子カウンティング機能をもつFalcon 3ECへと更新されたので、まずは標準試料を用いて撮影条件の最適化をおこなった。標準試料の1つであるbeta-galactosidaseを用いた解析では、試料ならびに撮影条件の最適化をおこなうことで、世界最高水準の2.3オングストローム分解能での構造解析に成功した。その構造では、タンパク質の側鎖のコンフォメーションや水分子をきちんと見ることができた。また、もう1つの標準試料であるGroELでも、到達分解能が3.0から2.5オングストロームへと向上した。また、電子カウンティング機能を用いないFalcon 2と同様の撮影様式でも、より高分解能の解析が可能であることも判明した。これらの最適化した撮影条件は、今後S6およびS13’ファージのデータを取得する際にも用いることができ、非常に有益な情報が得られた。
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