研究課題
海洋性細菌の細胞膜に存在するプロテオロドプシンは、レチナールが結合した光駆動プロトンポンプであり、光エネルギーを生体エネルギーに変換する役割を担っている。海洋有光層中の約8割の細菌にその存在が示唆され、数千を超えるホモログの遺伝子データが登録されている。この総存在量から海洋生態系全体のエネルギー循環に大きな役割を果たすと考えられている。このプロテオロドプシンの光駆動ポンプ機構解明には構造を知ることが重要であるという観点から、本研究では、プロテオロドプシンの野生型や変異体、光反応中間体の構造解析を目的とした。平成28年度は、研究実施計画に基づいて、大腸菌無細胞合成系を用いてプロテオロドプシンとその変異体を合成・精製して、X線自由電子レーザー施設SACLAでのserial femtosecond crystallographyによる構造解析により、放射線損傷の無いプロテオロドプシンの構造解析に成功した。また、最大光吸収波長が490 nmから520 nmにシフトする変異体の構造解析に成功した。この構造から、そのアミノ酸側鎖と水分子との相互作用がレチナール周辺の構造変化を引き起こし、最大光吸収波長が変化することを明らかとした。また、中間体構造解析を目的として、BRでの時分割シリアルフェムト秒構造解析に参加し、その技術ノウハウの習得を行った。このほか、プロトン輸送型PRと近縁にあるCl-輸送型ロドプシンについても、PRと同様の手法を駆使して構造解析を行った。この結果、1.5 Åという高解像度で、世界に先駆けて構造解析に成功した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 図書 (1件)
The Journal of Biological Chemistry
巻: 291 ページ: 17488-17495
10.1074/jbc.M116.728220
Nature
巻: 354 ページ: 1552-1557
10.1126/science.aah3497