研究課題/領域番号 |
15K18527
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
中村 瑛海 (伊藤瑛海) 国際基督教大学, 教養学部, 特任助教 (80726422)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞生物学 / 植物細胞 / RAB GTPase / Effector / 細胞内シグナリング |
研究実績の概要 |
低分子量GTPaseであるRAB5は活性型と不活性型をサイクルし、活性型時に「エフェクター」と呼ばれる分子群と相互作用することにより分子スイッチとして機能する。RAB5は真核生物に広く保存されているが、陸上植物は保存型RAB5に加え、ユニークな一次構造を持つ植物固有型RAB5を有する。申請者はこれらのRAB5のエフェクターとして、Rac活性化因子のシロイヌナズナホモログであるAtSWAP70の単離に成功した。SWAP70はシグナル伝達や細胞骨格制御に関わるRac GTPaseの活性化因子として報告されていることから、植物細胞ではRAB5とRacがカスケードを構築し、細胞内シグナリングを制御するという仮説を立てた。本研究は、この仮説の検証と分子機構の解明を目指した。研究を行った結果、当初の想定と異なり、AtSWAP70は、シロイヌナズナにおいては活性型のRho of plant 7 (ROP7)と相互作用することが明らかとなった。つまりAtSWAP70がRac活性化因子ではなく、ROP7のエフェクターである可能性が示された。そこで、AtSWAP70とROP7の相互作用を免疫沈降-質量分析法で調べるとともに、AtSWAP70がROP7の下流現象を制御する可能性を調べた。まず、恒常活性型ROP7の過剰発現がAtSWAP70の細胞内局在に与える影響を評価した。また、rop7 T-DNA挿入変異体を購入し、rab5変異体に対して、atswap70と同等の遺伝学的相互作用を示すか調べた。またAtSWAP70とROP7の相互作用をin vitroフルダウン法で検出するための準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は膜交通制御因子であるRABが、Rop(Rhoの植物におけるカウンターパート)の活性化因子として知られるSWAP70と相互作用し、Rop-RABシグナルカスケードを構築して細胞内現象を制御する可能性の検証を目的たした。研究の結果、AtSWAP70がRopの活性化因子ではなく、Rop7のエフェクターである可能性が示された。研究計画の見直しを行い、生化学的手法、顕微鏡を用いた解析手法、遺伝学的手法でAtSWAP70がRopの下流で働く可能性を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の期待とは異なる研究結果が得られたため研究計画を見直し、AtSWAP70がRop7のエフェクターとして、Rop7を介したシグナル伝達経路の下流を担う可能性の検証を進めた。現在、AtSWAP70とROP7の相互作用を免疫沈降ー質量分析法で調べるための条件検討を行っている。また、AtSWAP70とROP7のリコンビナントタンパク質を回収するためのコンストラクトを作成し、今後、AtSWAP70とROP7タンパク質を用いて、GTP、もしくはGDP存在下での相互作用を、in vitroプルダウン法によって調べる予定である。それぞれのリコンビナントタンパク質の回収と精製にあたり、現在の所属機関が所有していない、超音波破砕機の導入を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
事業期間中に異動となり、一部の研究計画の遂行が困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
生化学的な相互作用解析を行うため、超音波破砕機を購入する。
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