細胞内大規模タンパク質分解系であるオートファジーは、がん・神経変性・感染症などの抑制から発生・分化まで多岐にわたる生理機能を持つ。近年、細胞内の不要・危険物(細胞内寄生菌、 損傷リソソーム、不良ミトコンドリアなど)をオートファジーが選択的に除去し、細胞内恒常性の維持に寄与していることが明らかになり、「選択的オートファジー」と呼ばれている。 選択的オートファジーにおいては、分解されるべき基質にオートファジー関連タンパク質(Atgタンパク質)が集積することが知られているが、具体的にどのAtgタンパク質の集積の結果何が起こるのかが不明である。本研究の予備実験においては、各Atgタンパク質を強制的に細胞内小器官に集積させる実験系を構築した。その結果、LC3をミトコンドリアに強制的に集積させた場合に、ミトコンドリア量が顕著に減少することが明らかとなった。また、このミトコンドリア量の減少はリソソーム阻害剤であるBafilomycin A1によって阻害された。LC3は、隔離膜およびオートファゴソームの膜分子(Phosphatidylethanolamine)に共有結合し、オートファゴソーム形成の最終段階である隔離膜閉鎖に必要だと考えられている。以上のことから、これらの実験結果は、LC3(もしくはLC3が結合している分子、隔離膜・オートファゴソーム膜)をミトコンドリアに強制的にリクルートするだけで、ミトコンドリアがリソソーム依存性の経路で分解されることを示す。本研究において、この現象のより詳細なメカニズムを調査した。
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