研究課題/領域番号 |
15K18531
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡田 悟 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30734488)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 細胞分裂寿命 / 出芽酵母 / 胞子形成 / オルガネラ |
研究実績の概要 |
多くの生物は老化する。単細胞生物であっても、個々の細胞は分裂回数に限界がある。この限界を規定しているのは細胞に蓄積する何らかのダメージ因子であると考えられており、その候補としてERCs (Extrachromosomal Ribosomal DNA Circles)、タンパク質凝集体、膜電位の低下したミトコンドリア、pHの上昇した液胞などが考えられている。出芽酵母では、胞子形成過程を経ることで、娘細胞の細胞分裂寿命のリセットが生じることが既知であり、このときERCsの消失が起こることが分かっている。本研究では、これらの老化関連ダメージ因子とともにオートファジー関連タンパク質を可視化し、胞子形成過程における動態を観測し、細胞分裂寿命のリセットが生じる機構を解明することを目的とする。 細胞の老化と関連した因子として、本研究においては、ERCs (Extrachromosomal Ribosomal DNA Circles)、タンパク質凝集体、ミトコンドリア膜電位、液胞内腔のpHの4つに注目する。ERCsを可視化するにあたっては、lacOアレイとlacI-GFPの組み合わせを用いるとともに、ERCsの供給源であるrDNA領域の局在箇所である核小体についても可視化をおこなう。ミトコンドリアについては、その分布のみならず、膜電位の高低についても情報を得る必要がある。液胞についても、ミトコンドリア同様、その分布だけではなく、液胞内腔のpHの変動を調べる必要がある。各老化関連因子を可視化した酵母細胞株を作成し、タイムラプスイメージングを実施し、胞子形成過程での各老化関連因子の動態を観測する。 本年度は、核小体(rDNAと関連するオルガネラ)、ミトコンドリア、液胞のそれぞれを可視化した酵母細胞株を作成し、タイムラプスイメージングの撮像条件の検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にしたがって、核小体、ミトコンドリア、液胞について、各オルガネラ特異的に局在するタンパク質を蛍光タンパク質でタグ付けすることで可視化した酵母細胞株を作成した。波長の異なる2種類の蛍光タンパク質を使用することにより、ミトコンドリアと液胞の組み合わせについて同時に可視化した菌株も作成した。 これらの酵母細胞株について、栄養増殖条件において、アガロース包埋法を利用したタイムラプスイメージングを実施し、長時間の撮像が可能な実験条件を検討した。さらに長時間のイメージングを実施するため、マイクロ流路を用いた培養装置の使用条件についても検討を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に可視化した核小体、ミトコンドリア、液胞に加えて、タンパク質凝集体、ミトコンドリア膜電位、液胞内腔pHを可視化した菌株を作成する計画である。また、栄養増殖条件での長時間イメージングのための撮像条件を最適化した上で、これらの酵母細胞株について、胞子形成過程全体をカバーする長時間イメージングを実施する。さらに、老化関連因子に加えて、オートファジー関連因子も同時に可視化することにより、老化関連因子の排除過程とオートファジーとの時空間的関連性を明らかにすることを目指す。加えて、各老化関連因子の排除過程に特異的に作用すると考えられる変異を導入した酵母細胞株を作成し、これらの細胞について、それぞれの老化関連因子の胞子形成過程における振る舞いを可視化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属する研究室にマイクロ流路利用型ステージトップ培養装置が導入され、部局共通機器室の顕微鏡機材を使用する必要がなくなり、共通機器利用料の支払い経費分のコストを削減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
マイクロ流路利用型ステージトップ培養装置に関わる消耗品(主にマイクロ流路を形成してあるガラスボトムプレート)の購入に充てる計画である。
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