研究課題/領域番号 |
15K18534
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
石原 玲子 久留米大学, 分子生命科学研究所, 助教 (40509105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア核様体 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは融合と分裂を頻繁に繰り返し形態を変化させている動的オルガネラである。一方、ミトコンドリア独自のゲノム(mtDNA)は「核様体」と呼ばれるタンパク質―DNA複合体を形成し、マトリックス内に存在しているが、核様体の動的特性の概要およびその分子機構はほとんど明らかになっていない。申請者は、ミトコンドリア内の核様体の分布や動き・形態の制御機構を分子レベルで解明し、高次生命機能や病体などにおけるミトコンドリアダイナミクスとの相互関係を探ることにより、核様体ダイナミクスの生理的意義および核様体の存在意義を明らかにすることを目的として進めている。当該年度は研究実施計画にあるように、核様体とミトコンドリア膜とをつなぐ「連結分子」の網羅的探索のための条件検討を行なった。また、連結分子の既知の候補因子ATAD3に関して、通常またはミトコンドリア分裂抑制細胞内での局在、動態およびタンパク質のトポロジーを免疫染色やライブイメージングにより解析した。さらにこの因子のRNAiを行ない、核様体の状態やmtDNA量、クリステ構造、ミトコンドリアダイナミクスへの影響を検討した。また、in vitroでの核様体―膜構造の再構築系を用いて、この因子の必要機能領域の決定などを行ない、機能領域変異体を用いたレスキュー実験およびミトコンドリア分裂抑制細胞内での強制発現による表現型解析から機能を検証した。このように、細胞生物学および生化学的手法を駆使した核様体の動的特性に注目した研究は少なく、本研究成果から核様体ダイナミクスの真の分子機構および生理的意義に迫りつつあると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
核様体とミトコンドリア膜とをつなぐ連結分子の既知の候補因子に関してはおおむね順調に解析が進んでおり、研究成果をまとめる準備を進めているところである。しかし、本申請研究の最大の目的としている新規連結分子の網羅的探索に関しては、条件検討に時間がかかっておりやや遅れている状況である。当初は、ミトコンドリアの分裂抑制によって核様体クラスタリングが起き形成されるミトバルブを分画・可溶化し、ここから核様体と結合する内膜タンパク質を同定することで連結分子を特異的に同定できると考えていた。しかし、一般的なミトコンドリアの分画方法では核様体がクラスタリングした状態のミトバルブ状のミトコンドリアは効率よく分画することができないことが明らかとなった。そこで、分画は行なわずに、代わりに非常に効率よくミトバルブが形成される細胞株を樹立し、細胞抽出液全体を用いて探索を行なう手段に切り替えその条件検討を行なったため、当初の計画に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
新規連結分子探索の手段に大幅な変更を加えたが、今後は当初の研究計画に従い、免疫沈降物の質量分析により網羅的解析を行ない、連結分子候補の同定を細胞生物学、生化学的手法を用いて進めていく。また、既知の候補分子も加え、さらに生理的機能の解析も行なっていく。これらを本研究期間の成果として取りまとめ、国内外の学会、学術誌への投稿という形で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度では、新規連結分子の網羅的探索が条件検討までの段階であるため、実際に免疫沈降物の質量分析を行なうにあたっての経費や、候補分子同定後の機能解析に関わる経費の使用が少なかった。また、細胞レベルの解析には申請者が所属する施設が所有する機器をもちいた解析が中心であり、支出が当初の計画より少なかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は当初の研究計画に従い、次年度に本年度の研究計画分の実験を進めることを計画しているので、研究費はこれに沿った形で支出する。また、連結分子の既知の候補因子に関してはおおむね順調に解析が進んだため、研究成果をまとめる準備を進めているところであり、さらに多くの国内外の学会や学術誌への投稿が見込まれるのでその経費として使用する予定である。
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