ミトコンドリアは融合と分裂を頻繁に繰り返し形態を変化させている動的オルガネラである。一方、ミトコンドリア独自のゲノム(mtDNA)は「核様体」と呼ばれるタンパク質―DNA複合体を形成し、マトリックス内に存在しているが、核様体の動的特性の概要およびその分子機構はほとんど明らかになっていない。そこで、本申請研究ではミトコンドリア内の核様体の分布や動き・形態の制御機構を分子レベルで解明し、高次生命機能や病体などにおけるミトコンドリアダイナミクスとの相互関係を探ることにより、核様体ダイナミクスの生理的意義および核様体の存在意義を明らかにすることを目的とした。平成27年度には核様体とミトコンドリア膜とをつなぐ「連結分子」の網羅的探索のための条件検討を行なった。また、連結分子の既知の候補因子ATAD3に関して、通常またはミトコンドリア分裂抑制細胞内での局在、動態およびタンパク質のトポロジーを免疫染色やライブイメージングにより解析した。さらにこの因子のRNAiを行ない、核様体の状態やmtDNA量、クリステ構造、ミトコンドリアダイナミクスへの影響を検討した。また、in vitroでの核様体―膜構造の再構築系を用いて、この因子の必要機能領域の決定などを行ない、機能領域変異体を用いたレスキュー実験およびミトコンドリア分裂抑制細胞内での強制発現による表現型解析から機能を検証した。平成28年度には、前年度の研究成果を発展させ、さらに細胞生物学および生化学的手法を駆使した核様体の動的特性に注目した研究を進める計画を立てていたが、産休・育児休業による研究中断のため研究は実施されていない。
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