研究実績の概要 |
本申請では、生体組織のサイズ維持機構を明らかにするため、マウスの精巣上体細管の発生過程における力学的側面に注目し、管径を維持するための多細胞の協調的な振舞いを明示することが目標である。平成29年度は、細胞個々の動態を定量的に組み込むことができる数理モデルの構築を行い、シミュレーション結果と実験データを照らし合わせることで、管径維持に必要な多細胞動態機構を提言することを目的とした。 本研究では、多細胞の形態形成を表現するコンピュテーショナルモデルの枠組みの一つとして、バーテクスダイナミクスモデルを用いた。前年度までに得ていた実験データをもとに、管の大きさや細胞の挙動をシミュレーションに組み入れ、現象の再現を行なった。また、精巣上体細管で起こる細胞集団の配置換えを引き起こす仕組みについて、細胞が隣接細胞からの力を受けて能動的に動くシナリオをモデルとして表現し、シミュレーションを行ったところ、観察事実に合致する結果を得た。これにより、マウスの精巣上体細管の発生過程における上皮管の管径維持を説明する機構を提言することができた。内容は論文として取りまとめ投稿中である(bioRχiv, doi: https://doi.org/10.1101/172916)。 また、別の多細胞コンピュテーショナルモデルであるセルラーポッツモデルを用いた上皮管のモデリングも行った。さらに、マウス胎仔の組織だけでなく培養細胞を使った上皮管形態形成に対しても実験解析を行った。それらに関する総説や報告を国際誌にて発表した。
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