研究実績の概要 |
発生分化を制御する遺伝子csaAの転写のオン・オフが、細胞集団で同調して約6分間隔で振動する現象をこれまで見出してきた。そこで本研究課題では、周期的な遺伝子発現の発生分化での意義を理解するために、異なる周期性や位相をもつ新たな遺伝子の単離を試みている。新生RNAのみをラベルして回収したRNAに対する次世代シークエンサー解析を実施し、ここから候補遺伝子12個を選定し、遺伝子発現動態を1細胞レベルで連続的に計測するための細胞株を作製した。また、csaA遺伝子と同様の約6分間隔という周期で核と細胞質を行き来するGATAファミリー転写因子GtaCの標的遺伝子約550個の中から、今回実施した次世代シークエンサー解析の結果を組み合わせることで、新たに10遺伝子を解析対象として選定し、同様に1細胞レベルで遺伝子発現動態を計測する細胞株を作製した。作製したこれらの株で周期的な転写のオン・オフが見られるか検討するために、分化誘導後の細胞を用いてイメージング解析を行った。csaAで周期性が見られた分化誘導後5時間を中心に、分化誘導後3, 5, 7時間で1時間のタイムラプスイメージングを行ったところ、これまでに8遺伝子で転写の活性化を示す転写スポットを検出することに成功した。得られた3次元画像に対して、画像解析ソフトを用いて転写スポットを自動検出することに成功し、発生分化過程での遺伝子発現動態(発現強度、持続時間、頻度など)が、細胞間で大きく異なっているという結果が得られた。
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